社会新報

原発回帰政策を許さない~さようなら原発全国集会に4700人

東京・渋谷区内をデモ行進する参加者たち。横断幕を持つ鎌田慧さん(最前列左から3人目)。

 

(社会新報4月5日号3面より)

 

 岸田政権の原発回帰政策(メモ参照)が強行される中、「さようなら原発全国集会」が3月21日の午後、東京の代々木公園で開催された。野外ステージの周辺に約4700人(主催者発表)が集まり、脱原発の思いを共にした。主催は「さようなら原発」一千万人署名市民の会。

岸田政権の恥知らず

 先日逝去した呼びかけ人の大江健三郎さんらへの黙とうの後、主催者あいさつが行なわれた。
 ルポライターの鎌田慧さんは、岸田政権の原発回帰政策に対し、「恥知らずというか、無知・無謀だ。大企業がもうかるから原発をやる、せっかく造ったから動かすということだ。『くたばれ原発』だ」と批判した。
 ノンフィクション作家の澤地久枝さんは、「原発反対を言うのに勇気はいらない。言わなければ、政治はもっと悪い方向に行く」と呼びかけた。
 作家の落合恵子さんは、大江さんの思い出を語った後、「悲観主義に陥らず、かと言って楽観主義に乗っからず、自分の歩幅で歩いて行く。それを大事にしたい」と語った。

フクシマを忘れない

 続いて、2011年に起きた福島第1原発事故のその後について、福島と避難地域から3人が発言した。
 「これ以上海を汚すな!市民会議」共同代表の佐藤和良さんは、岸田政権の原発政策について、「福島原発事故を『なかった』ことにするものだ。『フクシマを忘れない』ということは、『原発回帰を許さない』ということだ」と批判した。
 また、原発敷地内のタンクにたまった放射性汚染水の処理問題について、「海への放出は絶対に許せない」と訴えた。
 「避難の協同センター」代表世話人の熊本美禰子さんは、自身も福島から東京に避難していると述べた上で、「原発は住民の犠牲の上に成り立つものだ」と訴えた。
 「3・11甲状腺がん子ども支援ネットワーク」の阿部ゆりかさんは、福島原発事故後に甲状腺がんと診断された3人の若者からのメッセージを読み上げた。文面から、3人が不安と恐怖の中で必死に生きるさまが垣間見えた。
 青森県の大間原発計画に反対するアピールや「フクシマ連帯キャラバン隊」の報告、「柏崎刈羽原発再稼働おことわりグループ」によるアピールなどもあった。

有事で狙われる原発

 浜岡原発から西に約60㌔の静岡県湖西市で2004年から3期12年にわたり市長を務めた三上元さんは、ロシアによるウクライナ軍事侵攻を受けて、次のように訴えた。
 「ウクライナにあるザポリージャ原発に対し、ロシアは直ちに戦車で攻めた。ウクライナ側は原発が破壊されることを懸念し、(徹底的には)応戦しなかった。原発が戦車隊に襲われたら、戦うことすらできない」
 市長時代から「原発反対」を公言してきた三上さんは、岸田政権に対し、「国防の第一は敵基地攻撃能力を持つことなのか」と疑問を呈し、「戦争になれば狙われる原発をなくすことがまず重要だ」と力説した。

推進と規制の一体化

 原子力資料情報室事務局長の松久保肇さんは、閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」とそれに基づく法改正案について、次のように指摘した。
 「福島原発事故後に、政府は原子力規制委員会を発足させて規制の役割を持たせ、推進の経済産業省と分離した。にもかかわらず、法改正によって運転期間規制を原子力規制委員会から経産省に移すという。政府は福島原発事故の教訓を捨て去り、安全性を劣化させようとしている」
 次のようにも語った。
 「日本政府は、ウクライナ危機による資源価格高騰に乗じて、行き詰った原発政策を強引に推し進めようとしている。だが日本中に原発が並んでいる状況では、(有事になれば)原発がターゲットになる。それなのに政府は、多くの問題を無視している」
 閉会後、「渋谷コース」と「原宿コース」の二手に別れ、デモ行進した。
 「渋谷コース」の先頭には、鎌田さん、澤地さん、落合さんらが並び、横断幕を手にした。デモ参加者らは「原発推進政策、反対!」「老朽原発の再稼働を許さない!」などと声を上げ、渋谷の道行く人たちにアピールした。

      ◇
 
メモ【岸田政権の原発回帰政策】岸田内閣は2月10日、「脱炭素社会を実現する」として、「GX(グリーン・トランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」を閣議決定した。「原子力の活用」が強調され、「次世代革新炉」等の新規原発建設や、60年超の運転期間延長も盛り込まれた。
 2月28日、この「基本方針」に基づき、5つの法改正案を「束ね法案」とする「GX脱炭素電源法案」が閣議決定され、国会に提出された。この中では、「60年超の運転期間延長」に関する所管が原発推進の経済産業省になっている。

 

「岸田政権の原発回帰反対!」などのプラカードを掲げ、訴える参加者たち(3月21日、東京・代々木公園)。

 

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