社会新報

【主張】相次ぐ総務省接待-政官業癒着の構造にメスを

(社会新報2021年3月17日号3面《主張》より)

 

総務官僚への接待が次々に明らかになっている。

菅義偉首相に近いとされる谷脇康彦前総務審議官(官房付)が、放送事業会社「東北新社」の接待に続き、NTTグループから高額な飲食接待を受けた事実が週刊文春に暴露された。

NTTが谷脇氏を接待した日付と総額は次の通り。

 

▽2018年9月4日、鵜浦博夫NTT前社長が接待し、総額30万2000円
▽同年9月20日、澤田純NTT現社長が接待し、総額8万7000円
▽20年7月3日、岩本敏男NTTデータ前社長が接待し、総額は19万3000円

 

3回の接待総額は約58万2000円。接待場所はいずれも、港区麻布十番にある会員制レストラン「KNOX」。この店はNTTグループの中核企業が資金を支える、別名“NTTの迎賓館”だ。

谷脇氏の行為は、国家公務員倫理法に明確に違反する。倫理規程には「自己の飲食に要する費用が1万円を超えるときは、あらかじめ倫理監督官が定める事項を倫理監督官に届け出なければならない」と記されているが、谷脇氏は総務省に届け出を一度もしていない。

NTTはNTT法によって規定される。政府がNTTの株式の3分の1以上を保有し、取締役の選任から事業計画まで総務相の認可が必要だ。NTTは総務省にとって国内最大の利害関係者である。利害関係者からの接待を禁じる倫理規程に明確に違反する。

また、昨年6月4日に巻口英司総務相国際戦略局長と総務審議官だった山田真貴子前内閣広報官が澤田社長から接待を受けていた。その総額は33万円。谷脇氏と山田氏は、菅首相の長男正剛氏が勤める東北新社から1人1回7万円超の飲食接待を受けていた。山田氏は3月1日に内閣広報官を辞職した。

谷脇氏は政権の看板政策である携帯電話料金引き下げの旗振り役で、首相に近いことで知られる。一連の接待の直前の18年8月、菅官房長官(当時)は札幌市内で会見し、携帯電話の利用料に関して「4割程度下げる余地はある」と発言。通信事業者に値下げを求めた。値下げ圧力と接待問題は密接に関係している。
さらに野田聖子元総務相ら政務三役への接待も明らかになっており、政官業の癒着構造に厳しくメスを入れなければならない。社民党など野党は今国会で疑惑の全容解明に全力を挙げる。