社会新報

【主張】教員をさらに過労死させ、国を滅ぼす~中教審答申

(社会新報9月19日号3面より)

 

 中央教育審議会が8月27日、教員の働き方改革に関する答申を出した。日本の教員は過労死寸前まで働かされているが、地方公務員である教員に労基法が適用されていないからである。残業を規制するための36協定を使用者と結べないのだから、この事態は必然であった。労基法の代わりに、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(1971年制定、名称の一部変更が2004年。以下、給特法)が制定され、どんなに残業しようが給料の4%の「教職調整額」で教員は53年間、好き放題働かされてきたし、今も働かされている。
 当然、日教組や現場の教員の多くは、「給特法廃止、労基法適用」を求めてきた。にもかかわらず、中教審の答申は「教職調整額」の「10%以上」への引き上げに終わった。日本では自民党が長らく政治権力を握ってきたが、彼らがことに力を入れたのが教育の支配であった。「教員は労働者であり、正しい政治を求める」と高らかに宣言した日教組は最大の邪魔者であり、つぶす対象であった。
 日教組に結集する教育労働者が賃金アップを求めてストライキを決行すると、幹部だけでなくスト参加組合員全員に戒告処分を文部省・都道府県教委に行なわせた。この処分は賃金の3ヵ月延伸(通常1年間欠勤等なく勤務すれば1号給昇給するところ、15月をもって1号給昇給)という経済的不利益を伴う過酷な処分であった。日教組はこの不利益に対して、生涯にわたり救援したため、兵糧は20年もたず、ストを止めざるを得なくなった。教員が労働者であることは世界の常識であるにもかかわらず、権力者たちは絶対にそれを認めたくないのだ。
 この長年の自民党・文部(科)省の教育行政が教員の労働者性を奪い、過労死する教育現場をもたらした。教職調整額を10%以上に引き上げても、労基法適用除外を続け、教員が労働者であることを認めなければ、教員の過労死は防げない。それどころか教員の成り手が絶えて、日本の公教育は死滅するしかなくなる。日本国の破滅である。
 今回の中教審答申に、教諭と主幹教諭の間に別の特別職を設けるという提言があった。文科省の周辺にいる人々がいまだに1975年の主任制度導入に始まる階層別教員管理制度の発想を持っているのかと思うと、やはり日本の教育は絶望的である。