(社会新報11月14日号3面より)
死刑や懲役刑の判決が確定していた事件の再審請求が認められる動きが相次いでいる。
一つは1966年に静岡県清水市(現・静岡市清水区)で一家4人が殺害された強盗殺人・放火事件で逮捕、起訴された袴田巌さんの死刑が確定していた「袴田事件」だ。9月26日に静岡地裁は再審裁判で無罪判決を言い渡した。
いま一つは1986年に福井市で女子中学生が殺害された事件で、一審の福井地裁は被告の前川彰司さんを無罪としたものの、二審の名古屋高裁金沢支部は逆転有罪とし、心神耗弱を認め懲役7年の判決を言い渡した。最高裁もこれを支持して確定した。10月23日、名古屋高裁金沢支部は再審開始を認める決定をした。
袴田事件では3つの証拠がねつ造され、検察がうそや証拠隠しをしていたことがありながら、袴田さんは47年7ヵ月間も獄中生活を強いられた。そのため袴田さんは、死刑への恐怖などから拘禁症状を発症した。姉のひで子さんは「良くなっている」と近況を話すが、死刑判決や長期拘留の残酷を痛感する。
社民党の服部良一幹事長は、袴田無罪判決を受けた9月27日付の談話で「今回あらためて再審制度の問題点が浮き彫りになった」として、再審制度の法整備を行なうことを強く求めた。
いま一つ注目を集める再審請求事件がある。1963年に埼玉県狭山市で女子高校生が殺害された狭山事件だ。犯人とされた被差別部落出身の石川一雄さんは一審の浦和地裁(現さいたま地裁)の死刑判決を控訴したが、74年の東京高裁の無期懲役判決が確定した。
「部落差別が生んだえん罪」と訴える石川さんの再審請求は3次に及ぶ。袴田巌さんの姉ひで子さんも参加して11月1日に東京で開かれた市民集会では、「次は狭山だ」の声が相次いだ。石川さんの無実を証明する新証拠が次々と提出されながら、再審の扉は開かれない。これほど理不尽なことはない。
日弁連(日本弁護士連合会、渕上玲子会長)も「えん罪被害者を速やかに救済できるよう今こそ再審法の改正を」と求めている。
具体的には、①証拠開示の制度化。もっと早い段階で重要証拠が開示されるようになれば、早期解決が実現する②検察官抗告の禁止。やり直しの裁判もとっくに終結する などが骨子となっている。70年以上一度も改正されない再審法の改正に全力を挙げたい。