(社会新報5月23日号3面より)
岸田首相は「聴く力」があると自負している。しかし、それは米国政府や日本の大企業に対してであり、庶民の願いや切実な訴えに耳を傾ける力も意思もないことをこの間のいくつかの事実が示している。
岸田首相は4月に訪米し、バイデン大統領から「国賓級の待遇」を受けたという。それもそのはずだ。大軍拡で米国製兵器の爆買いを進めている上に、発表された共同声明は「未来のためのグローバル・パートナー」と題され、岸田首相は「日米両国が2国間や地域にとどまらず、…グローバル・パートナーとなっている」と述べているからだ。
日米安保体制が軍事面で全世界に関与すると表明したのだ。岸田首相は米国議会で「日本は米国と共にある」とまでブチ上げた。中国が猛反発したことはいうまでもない。しかし、その米国は中国との関係修復に動き始めている。米国から日本ははしごを外されかねない。
5月1日に水俣病の患者・被害者団体と環境省の懇談の場があった。出席した8団体各3分の発言の持ち時間が過ぎると、環境省職員が発言を制止したり、マイクの音を切った。とんでもない暴挙であり、抗議の声が上がったのは当然だ。 長年、水俣病で苦しんできた患者や家族が、伊藤信太郎環境相に直接訴えているにもかかわらず、耳を傾けようとしなかったのである。何が「聴く力」か。ところが、岸田首相は伊藤氏を更迭しない。
岸田政権のこうした本質を見抜き、「政権交代しかない」と有権者が意思表示したのが4月28日に投開票された衆院の3つの小選挙区での補欠選挙だった。
小選挙区制度の導入以来、自民党が議席を失ったことがないという〝保守王国〟の島根1区でも社民党が推薦した亀井亜紀子候補(立憲民主党)が当選した。
それでも自民党に反省はない。終盤国会の焦点である政治資金規正法の改正をめぐっても肝心な点は全くのゼロ回答だ。「政治とカネ」問題の発端となった政治資金パーティーと企業・団体献金は当然、全面禁止すべきだが、踏み込もうとしない。
野党は衆院補選の結果を受け、衆院の早期解散、総選挙の実施を岸田内閣に求めている。
社民党もこうした動きに呼応しながら選挙準備を加速させ、岸田政権を退陣に追い込む決意だ。ともに頑張りたい。