社会新報

【主張】改正政治資金規正法~裏金を合法化し金権腐敗を温存

(社会新報7月4日号)

 

  「検討」と「先送り」と「抜け道」のオンパレードだった。
 半年間の政治の混乱の末に成立した自民党提出の改正政治資金規正法は、抜本改革とは真逆の金権腐敗を温存する内容だ。
 改正政治資金規正法が6月19日の参院本会議で自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立した。2026年1月に施行される。衆院で賛成した日本維新の会は、調査研究広報滞在費(旧文通費)の使途公開について、自民が今国会中の法改正に応じないことを理由に反対に転じるという迷走劇を演じた。『毎日新聞』(6月24日付)の世論調査によれば、改正規正法が裏金事件の再発防止につながるとは思わないと答えた人が80%だった。
 改正規正法の問題の第1は、政党の本支部への企業・団体献金に一切手をつけず、温存したことだ。社民党など野党側は企業・団体献金の見直しを主張したが、自民党は検討項目にすら上げなかった。
 第2に、裏金づくりの温床である政治資金パーティーをこれまでどおり温存したこと。パーティー券購入者名の公表基準額を現行の20万円超から5万円超に下げたが、パーティー1回当たりの規定であり、複数回開催したり、企業幹部が分担購入すれば、これまでと変わらず非公開となる。
 第3に、政党本部から政治家個人に渡されてきた政策活動費は、これまで規正法上に規定のないものだったが、自民案はこの政策活動費を規正法に新たに書き込み、合法化した。政策活動費の領収書や明細書などの公開は10年後としたが、10年後では選挙買収や贈収賄罪などの時効が過ぎており、発覚しても罪に問うことができない。しかも、公開の制度設計は今後の検討課題となっている。
 第4に、収支報告書に虚偽記載などがあった場合の議員本人の責任追及は、要件にあいまいさが残り、言い逃れる可能性がある。
 第5に、改革の具体策の多くは今後「検討」するにとどまり、事実上先送りされた。実効性に乏しい「ザル法」との非難は避けられまい。今回積み残しとなった課題は多い。議員が規正法違反で処罰された場合に政党交付金を減額する措置や、政治資金を監視する第三者機関の設置などは付則に記され、今後の検討に委ねられた。
 自民党には金権腐敗政治を根絶する意思も能力もない。次期総選挙で政権交代に追い込むほかはない。