社会新報

【主張】「災害列島」に思う ~ 防衛予算より防災予算を

(社会新報9月12日号3面より)

 

 9月1日は「防災の日」だった。日本が「災害列島」であることを今年ほど実感させられている年はない。
 元日の能登半島地震から7月の山形・秋田豪雨、8月は南海トラフ巨大地震の注意を呼びかけることになった宮崎県沖地震、そして8月末から9月にかけて猛威を振るった台風10号と続いた。人的、家屋などの被害に加え、交通網のマヒ、経済活動の停滞と深刻な影響を及ぼした。
 能登半島地震で災害派遣された自衛隊は8月末で撤収した。活動は多岐にわたり、被災者から感謝されたと報じられている。
 私たちもその活動に敬意を表したい。社民党はかねてから、災害活動を自衛隊の「主たる任務」に位置付ける「災害救助隊」へ改編することを訴えてきた。自然災害が頻発しており、早急に具体化されるべきだ。
 ところで自衛隊が関係した活動のなかにはこれまでなら自治体など公共部門が担っていた部門が多いのではないか。
 しかし、「地方の疲弊」が広がり、自治体労働者は減少し、自衛隊が肩代わりする形になっている。それでは限界がある。当該地域の防災に責任を負うことになるのは自治体だからだ。国は自治体の防災、減災、老朽化対策への支援こそ強化すべきだ。
 ところが防衛省は8月末に2025年度予算の概算要求を決定した。総額は初めて8兆円台に上り、過去最大規模で敵基地攻撃能力の強化につながる兵器に巨額が投じられようとしている。
 元文部科学事務次官の前川喜平さんは戦後1人の戦死者も出ていないのに防衛費を大幅要求することを批判して「防衛費より防災予算を増やすべきだ」(東京新聞9月1日付「本音のコラム」)と訴える。同感だ。
 今月12日には自民党総裁選が告示されるが、裏金議員や裏金の取り扱いが党内で争点となるというレベルの低さにあぜんとするしかない。また「重視してほしい政策」を問う世論調査で常に優先順位が低い憲法改「正」を、総裁選出馬に意欲を示す議員が共通して掲げる。それも「災害時の対応」のためにと「緊急事態条項」を臆面もなく主張する。
 総裁選後の遠くない時期に衆院の解散、総選挙があることは間違いない。人の命より権力の自由な行使を可能とするための憲法改「正」をもくろむ自民党政治を立憲野党と市民の力で今度こそ退場させよう。