社会新報

【主張】資本主義への対案は社会民主主義~新自由主義から脱し社民主義の実践を~

(社会新報2022年2月23日号3面【主張】より)

 

 1月に開会した第208国会の論戦が本格化している。岸田文雄首相は「新しい資本主義」の実現を掲げ、施政方針演説でも「新自由主義的な考え方が生んだ弊害を乗り越える」との考えを示した。岸田首相の「新しい資本主義」の説明は総論的な内容に終始し、具体性を欠いたものではあったが、「新自由主義」的な政策の見直しに取り組む姿勢自体には期待したい。

 しかし、企業や個人の自由と競争、市場原理を重視し、政府や公共サービスを縮小し市場に委ねようとする「新自由主義」の本質は、もともと資本主義と同根だ。私有財産制の下で資本の自由な活動によって生産を組織するのが資本主義で、その欠陥を解消・緩和しようとしてきたケインズ主義など修正資本主義の流れに反対し、資本主義を徹底しようとしたのが「新自由主義」である。「富める者はますます富み、貧しき者は持っている物でさえ奪われる」のは、資本主義の本質であり、新しいも古いもないのである。

 本格的に資本主義が形成された18世紀後半以前から資本主義の弊害に反対し、より平等で公正な社会を目指してきた思想・運動が社会主義だ。古くはトマス・モアの「ユートピア」の時代から、500年にも及ぶ試行錯誤を重ねて来た。その中で19~20世紀に一世を風靡(ふうび)した「マルクス主義」が主張する暴力革命やプロレタリア独裁の手法に反対し、多党制を前提にした議会政治を通じて資本主義を修正することを主張したのが社会民主主義だ。

 社会民主主義が主張してきた処方箋はすでにはっきりしている。労働の規制強化、雇用の安定と賃上げ、公共の役割の再建と社会福祉の充実、教育の無償化、資本への規制強化、金融所得課税強化、大企業や富裕層への応分の課税、税の再分配機能の強化による格差是正、気候変動対策や多様性の尊重による持続可能な社会づくりなどだ。すでに多くの実践も行なわれている。「成長」はその結果としてもたらされるものだ。

 もちろん現存する「社会主義」国家や社会民主主義運動はさまざまな問題を抱えており、そのまま現代の資本主義の対案とはならないかもしれないが、すでに資本主義の弊害への対抗策として十分な経験を積んでいるのも事実。いま必要なのは「新しい資本主義」の議論ではなく、社会民主主義の実践ではないか。

 

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