社会新報

そごう・西武労組の闘い~ストは労働者の基本的権利~支援と連帯の輪を広げよう

約300人の組合員たちがスト中の西武池袋本店前をデモ行進した。

臨時休館となったシャッターの降りたままの西武デパート池袋本店前で情宣に立つ組合員たち。

 

(社会新報9月20日号1面より)

 

 8月31日、約4000人で組織する「そごう・西武労働組合」(連合・UAゼンセン加盟)が東京・池袋駅の西武百貨店の池袋本店でストライキを実施した。同本店に勤める組合員約900人がストに参加した。

 西武百貨店を経営するセブン&アイ・ホールディングスが傘下のそごう・西武を米投資ファンド(フォートレス・インベストメント・グループ)に売却することを決めたことに対して、同組合側は、経営側が組合に対して従業員の雇用維持や事業継続について具体的な説明を果たしていないとして団体交渉を続けてきた。しかし、売却を急ぐセブン&アイの「動きが際立ってきており、いつ何が起こるか分からない。(組合員、従業員の)不安や不信感がある」(寺岡泰博委員長)として8月28日にストの予告を通知していた。

スト知らぬ世代へ影響

 31日、ストに入った西武百貨店池袋本店では、「そごう・西武労働組合のストライキ実施の影響により、誠に勝手ながら全館臨時休館とさせていただきます」との張り紙が貼られたシャターは一日中開けられることはなかった。
 憲法28条(メモ)の団体行動権でも、労働組合法でも認められているストライキを含む労働争議だが、近年は激減と言っていいほど減少していた。半世紀前の1974年のピーク時の10462件(厚生労働省)に比べ、昨年は2・5%(270件)にすぎず、ストライキという言葉を聞いたことのない世代も増えている。連合の今年1月のアンケート調査では労働組合やストライキという言葉を聞いたことがない学生が3割に上っている。

賛成93%でスト権確立

 そんな中、実施前からテレビや新聞でも組合側の主張や意義、賛成率93・9%でスト権が確立されている正当性などが詳細に報じられたこともあってか、ストは冷静に、また好意的に受け止められた。マスメディアも「従業員の方がとても心配で、雇用が守られるようにしてほしい」「働いている人たちがこういう形で意思表示するのは大事なことではないかと思う。ストライキ自体とても久しぶりで、一石を投じたと感じる」といった市民の声を伝えた。
 労働者が当然の権利を行使することの重要性が可視化され、またマスメディアを通してその意義が広く知られたことで、既存の労働組合や「ストライキは教科書でしか知らないので、とても驚きました」(20代男性・NHKより)という若い世代に広がっていく可能性を感じる「事件」だった。

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 【日本国憲法第28条】労働者の権利として、「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」といった3つの権利を認めている。これらを労働三権と呼ぶ。団結権は、労働者が、雇う側と対等な立場で話し合うために労働組合をつくる権利、また組合に加入できる権利。団体交渉権は、労働組合が雇う側と労働条件などを交渉し、文書などで約束を交わすことができる権利。団体行動権は、労働条件改善のため、仕事をしないで団体で抗議する権利、いわゆるストライキ権のこと。