社会新報

【共同テーブルシンポ】統一教会の実態を徹底追及~献金被害救済法の問題点を指摘

↑前列左から山口広弁護士、評論家の佐高信さん、ジャーナリストの鈴木エイトさん、阿部克臣弁護士。後列左から川井康雄、木村壮、中川亮、井筒大介、久保内浩嗣の各弁護士(12月2日、衆院第1議員会館)。

 

(社会新報12月21日号1面)

 

 長年にわたり統一教会問題に取り組んできた「全国霊感商法対策弁護士連絡会」(以下、全国弁連)の弁護団のメンバーらが、『統一教会との35年の闘い』(旬報社)を刊行し、2日、衆院第一議員会館でシンポジウムを開催した。リベラル政治勢力を支援する識者団体「共同テーブル」が主催し、150人が参加した。共同テーブル発起人の佐高信さんが司会を務めた。
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 最初に発言したのは、全国弁連の初代事務局長で代表世話人の山口広弁護士。1987年から霊感商法と闘ってきた山口弁護士は、「統一教会は単なる宗教団体ではない」とその異常さを強調。
 「統一教会は、創始者の文鮮明氏の求めるものを実現するさまざまな部隊を持つ特殊な集合体で、反日民族主義団体でもある。反共を旗印に、韓国の朴正煕政権や米国の共和党、北朝鮮の歴代の政権との関係を深めてきた。米国の保守層に一定の影響力を持つ新聞『ワシントンタイムズ』も、統一教会がオーナーだ。統一教会では文氏はメシア(救世主)で、献金の目標はただのノルマではなく、死ぬ気でお金を集めないといけない」(山口弁護士)

安倍氏の謝礼いくら 

 続いてジャーナリストの鈴木エイトさんが発言。「安倍晋三元首相と統一教会の関係はまだ全然ちゃんと解明されていない。ビデオメッセージでかなり膨大な謝礼を安倍さんは統一教会からもらっているはず。その話が一切出てこない」と、統一教会の被害者救済法の成立で幕引きにするのではなく、継続的にメディアが追及することの重要さを訴えた。
 北海道からはオンラインで郷路征記弁護士が参加。「統一教会の伝道過程が、自身の信仰を自分の判断で選択できるという信教の自由を侵害する違法なもの」と述べ、「先祖供養のために犠牲が必要だと信じ込ませ、全財産を献金させる。統一教会のやり方を知ることが重要な対策」と述べた。

「禁止行為」にすべき

 全国弁連の2代目事務局長の川井康雄弁護士は、被害者救済法の問題点を解説。同法の「不当勧誘行為で寄付者を困惑させることを禁止」とする部分で「むしろ、統一教会の信者は自分から喜んで寄付をしているという被害が多い。マインドコントロールの問題をもっと追及すべきだった」と残念がった。自由な意思を抑圧しないことや、寄付者やその配偶者・親族の生活維持を困難にしないこと、勧誘する法人等を明らかにし、寄付の使途を誤認させないことについて、「配慮義務にとどまっているが、禁止行為にすべきだ」と求めた。
 統一教会の文献を分析した阿部克臣弁護士は、「『日本は全世界のために進んで犠牲の道をあゆんでいかないといけない』とあり、(神に捧げる)『聖物』として7ヵ国を挙げ、その中に日本も含まれている」と、その異常さを指摘。
 シンポでは元信者たちも発言。現在はライターとして活躍する多田文明さんは、「一世信者として、二世信者の人々に申し訳ない」と述べ、「食べるものが少なく、本当に貧しい生活を送っている。二世の救済を本気で考えないといけない」と述べた。
 動画投稿サイト「YouTube」で活動する信者二世の「デビル」さんは「親世代の信者は年金保険料も払っていない。統一教会は高齢者の信者に生活保護を受けさせ、献金させている。私の母に闇金を紹介したのも統一教会」と被害を訴えた。
 木村壮弁護士は、「統一教会は、霊感商法でお金を集めることを、『生産ライン』と呼んでいた。人の精神の救済ではなく、お金集めばかり」と指摘。宗教団体と言えない実態を批判した。

「養子縁組」で追及を

 日本脱カルト協会事務局長の久保内浩嗣弁護士は、「合同結婚式で韓国に嫁いだ女性たちは、本当は日本に帰りたいが、子どもがいて連れて帰れることが難しく、帰国できない。韓国で養子縁組された日本の子どもたちもいる。こうした女性や子どもたちを救うために外務省は動くべきだ」と強調した。
 元新聞記者の中川亮弁護士は、「(2021年9月に)安倍元首相が統一教会関連団体にビデオメッセージを送った際に記者会見を開いたが、主要メディアは、どこも取り上げなかった」とメディアの怠慢を指摘。他方、「最近、献金した信者が返金を求めないとの念書を書かされたことが報じられたが、こうした報道を続けることが被害の歯止めになる」と述べた。

ことば

【献金被害救済法】統一教会(世界平和統一家庭連合)への高額献金問題を受け、寄付の不当な働きかけを規制する法律。12月10日に成立した。「霊感」の知見を使って不安をあおったりして寄付を募ることを禁止する。やめるよう国に命じられても従わなければ刑罰を科す。寄付を求める法人に対して「寄付するか否か適切に判断するのが難しい状態」に陥らせないよう配慮する義務も規定し、守られなければ国が是正を勧告。しかし、配慮義務規定は禁止規定ではなく、抽象的で、勧告に従わなかったとしても罰則はない。今後、同法の実効性を高めるため法改正が必要だ。

 

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