社会新報

最高裁判決後もトイレ使用制限~トランス団体が経産省に早急改善を要請

経産省職員に要請書を手渡す畑野代表(左から3人目)。左から石川議員、大椿副党首。(1日、参院議員会館)

 

(社会新報10月17日号3面より)

 

 一般社団法人Transgender Japan(畑野とまと代表)が1日、経済産業省・人事院に対し、トランス女性職員の女性用トイレ使用制限撤廃を求める要請行動を行なった。社民党の大椿ゆうこ副党首(参院議員)と立憲民主党の石川大我参院議員が同席した。
 経産省のトランス女性職員が、2010年以降、執務階から2つ以上離れた階のトイレを使用するよう求めるルールを課されている問題については、最高裁が23年7月11日、女性用トイレの自由使用を認めない人事院の判定を違法とする確定判断を下した。しかし、1年以上経った現在も、使用制限は継続されている。
 畑野代表らは、最高裁判決で全ての裁判官が自認する性別に即して社会生活を送ることを重要・切実な利益と位置付けているとし、使用制限の即時撤廃を要求した。これに対して経産省は、最高裁判決を重く受け止めているとしつつ、判決後の1年間は理解醸成に努めてきたと答えるのみであった。畑野代表は、「理解醸成は必要だが、当該職員の人権尊重は周囲の理解の有無と関係ない」と批判した。経産省からは「いろいろな職員がビックリしないか綿密に進めなければならない」と、差別を続ける職員をかばうような発言も飛び出し、大椿議員は「周囲の理解を待っていれば要求実現の見通しは立たない。トイレという生理的要求すら拒まれている彼女の要求の実現を第一にすべき」と批判した。
 2010年にルールができた理由は、職員説明会で同僚女性から不安意見が出たということだが、その後この職員は職場で女性として受け入れられてきた。ルール導入時から現在まで、人事異動により職員の執務階が変化していることを考えれば、ルールを維持する合理性はない。
 いつ撤廃できるか尋ねる大椿議員に対し、経産省は人事院との相談が必要と答えるにとどまった。人事院は最高裁判決後、職員と経産省との間のあっせんを行なってきたが、経産省側の対応が変わらないため、再判定を出すよう準備しているという。Transgender Japan側は「社会をけん引する行政が啓発的に対応しなければ、社会は変わらない」と、経産省らの速やかな対応を重ねて求めた。