社会新報

【旧統一教会問題 追及第1弾】 藤倉善郎さんの特別レポート 統一教会と自民の癒着を暴け ~安倍家三代にわたる「負の遺産」~

(社会新報2022年8月3日号1面より)

 

 統一教会と自民党の深い癒着関係を追い続けてきたジャーナリストの藤倉善郎さんが本紙に特別レポートを寄せた。

 

 

 安倍晋三元首相を銃撃し殺害した山上徹也容疑者。報道や関連方面の記者会見等を総合すると、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の信者である母親が1億円近い献金をして、2002年に自己破産した。犯行動機の詳細は不明だが、少なくとも統一教会への恨みが、統一教会と近しい安倍氏に向けられたと思われる供述が報じられている。

 山上容疑者自身、安倍氏の祖父・岸信介から続く自民党あるいは安倍氏と統一教会との関係は把握していたようだ。父・晋太郎も統一教会と親しく、過去、自民党内で議員に統一教会信者を秘書として紹介していたと報じられたこともある。

 この歴史がどのように犯行に結びついたのかは、今後の捜査や公判を待たなければ、確たることは言えない。しかし政治家と統一教会との関わりを考える時、50年以上前からの歴史以上に重要なことがあることは確かだ。7年8ヵ月にわたる第2次安倍政権下で、自民党議員と統一教会の現在の関係があらためて強化されてきたことだ。安倍氏自身とその周辺の議員たちの直接的な責任は決して小さくない。

霊感商法で被害者が続出

 1992年。統一教会は歌手の桜田淳子などの合同結婚式参加表明によって注目を集め、それ以前から弁護士たちが対策に取り組んできた霊感商法被害の問題も含めて、批判が高まった。

 2000年代には、統一教会と国会議員の関係はかつてほど大っぴらにしにくい空気ができあがっていた。06年に統一教会の関連団体「天宙平和連合」(UPF)の大会に祝電を送った安倍氏(当時官房長官)は、「誤解を招きかねない対応」として担当者に注意した旨をコメントしている。実際の関係がどうあれ、表向き、祝電には問題があったとする立場を表明していた。

 直後の07~10年にかけて、全国で統一教会関連の運勢鑑定、健康食品販売、印鑑販売の業者が次々と警察に摘発される。容疑は、薬事法違反や、「先祖の因縁」を払わなければひどい目にあうかのようなうたい文句で相手を畏怖困惑させて商品を売りつけた特定商取引法違反だ。統一教会本部の家宅捜索はまぬがれたが、支部に当たる地区教会にも捜索が入った。東京の業者「新世」の事件では、関係者に執行猶予付きとはいえ懲役刑の判決も出され、統一教会との関連も認定された。

 ところがそれ以降、統一教会はあらためて政治家とのつながりを強化する。09~12年の民主党政権下では、同党議員にも秘書を送り込もうとしていたと言われる。

自民党が政権を奪還した12年から第2次安倍政権が始まると、自民党議員との関わりはどんどん露骨に。関連団体のイベントに議員が参加すると、各団体自身がウェブ上でのイベント報告や動画で堂々とそれらを見せつけ、議員たちの中には、SNSなどでイベント参加などを自ら報告する者もいた。

 逆に、報道はなくなった。かつて安倍氏自身が「祝電」を問題視された当時は、国会議員が関連団体から献金を受けたケースも報道されていたのだが。

第2次安倍政権で露骨に

 しかし第2次安倍政権下の15年、高木宏寿衆院議員が代表を務める自民党北海道第3選挙区支部に、統一教会関連団体「世界平和連合」からパーティー券代として25万円の支払いが行なわれている。16年には、下村博文衆院議員が代表を務める自民党東京都第11選挙区支部に、統一教会の実質的な機関紙とも言える『世界日報』の発行元、世界日報社から6万円の寄付。17年には、石破茂衆院議員が代表を務める自民党鳥取県第1選挙区支部に世界日報社の元社長から10万円の寄付。13年と16年にはそれぞれ、細野豪志衆院議員(当時民主党、現自民党)と玉木雄一郎衆院議員(当時民進党、現国民民主党)にも、世界日報社の元社長から寄付があった。

 統一教会関連団体のイベントなどへの出席や祝電も、枚挙にいとまがない。19年の第4次安倍改造内閣発足時には、統一教会関連のイベントに出席するなど何かしらの関わりを持っている大臣が11人、官房副長官1人、副大臣6人、政務官1人もいた。

第4次改造内閣で閣僚11人関与

 安倍氏自身、統一教会関連団体への祝電や会合出席のほか、ジャーナリスト・鈴木エイト氏の取材によれば「桜を見る会」や首相官邸に統一教会や関連団体の幹部を招いたケースもあるという。極めつけが、昨年9月に統一教会が「友好団体」と称して別団体を装うUPFが開催したイベントへのビデオ出演だ。しかも、会場は韓国にある統一教会の施設である。

 今後の安倍派を率いる1人として名が挙がる下村博文氏も、統一教会関連団体のイベントへの出席のほか、代表を務める自民党支部から12年、統一教会系の世界平和女性連合に会費を支払っている。また、15年に統一教会が現在の「世界平和統一家庭連合」へと名称を変更した際、当時文科相だった下村氏が関与した疑惑も指摘されている。

 統一教会と国会議員の関わりは、安倍氏の死によって消えるわけではない。この「負の遺産」をいかに払拭(ふっしょく)するか。政治家、政党、メディア、有権者の問題意識が問われる。(ジャーナリスト・藤倉善郎)

 

↑旧統一教会の関連団体「天宙平和連合」(UPF)が開いた大規模集会に、安倍元首相がビデオメッセージを寄せた(2021年9月12日)。

 

 

 

 

↑1992年8月25日、ソウル郊外で開かれた旧統一教会の合同結婚式で儀式を行なう文鮮明教組。(撮影=橋本昇さん)

 

↑国際勝共連合の1985年東京セミナーで議長を務めた岸信介元首相。この反共組織は59年に文鮮明と岸と笹川良一の各氏が中心となって結成された。(撮影=橋本昇さん)

 

ふじくら・よしろう

大学在学中から自己啓発セミナーの問題を取材。2004年からジャーナリストとしてカルト問題全般を取材し、09年にニュースサイト「やや日刊カルト新聞」を創刊。

 

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