社会新報

【主張】「世界難民の日」に思う-難民問題は「共生社会」への試金石-

(社会新報2021年6月30日号3面《主張》より)

 

毎年6月20日は国連が定めた「世界難民の日」だ。難民問題への理解を深めることを目的に2000年に国連総会で制定されたもの。1951年の「難民の地位に関する条約」は、政治的な迫害や武力紛争、人権侵害から逃れ、国境を越えて他国に庇護(ひご)を求める人々を「難民」と定め、これを保護することを加盟国に義務づけた。現在146ヵ国が参加し、日本も81年に加入している。

国連難民高等弁務官事務所によると、2020年末の難民、難民申請者、国内避難民の総数は、8240万人に達し、過去最多となったという。2010年の4100万人から倍増だ。新型コロナウイルスの影響で多くの国境が閉鎖され、人の移動が制限される中でも、紛争や内戦、政情不安から逃れ、祖国を離れる人の数は増え続けている。

こうした人たちを受け入れて保護し、生命・安全などの基本的権利を保障することは、国際社会の責任であり、難民条約参加国の義務でもある。しかし、独、米、仏、英などが毎年万単位の難民を認定し保護している中で、2020年の日本の難民認定者数はわずか47人。ドイツの1200分の1(19年の場合)にすぎない。認定率も2ケタ低い。過度に厳格な基準、不透明な手続き、形式的な認定業務のあり方、申請者の長期収容、就労を認めない仮放免など、難民認定や入国管理制度は批判されてきた。

これを口実に第204回国会には「出入国管理難民認定法一部改正案」が提出されたが、収容に代わる監理措置制度の創設、難民申請者への送還停止の制限、送還忌避者への刑事罰創設など、問題を改善するどころかさらに悪化させる内容だった。名古屋の入管施設で起きた死亡事件の真相究明の声が高まったこともあって、政府は法案を取り下げたが、このままでよいわけではない。国際基準に沿った難民認定制度の整備や支援施策、人権軽視との疑念を持たれないような入管制度の整備は急務だ。

サッカーワールドカップ予選のため来日していたミャンマーのピエ・リアン・アウン選手は、試合中に国軍への抗議の意思を示したことで、帰国すれば迫害を受ける恐れがあるとして、6月22日、大阪出入国在留管理局に難民認定を申請した。身を危険にさらして軍政に抗議した難民申請者が、不当に入管施設に収容されたり、軍政の下に強制送還されることがあってはならないだろう。

 
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