社会新報

対中国戦を煽る重要拠点に-危険性を増す「米海軍横須賀基地」-

(社会新報2021年12月8日号1面より)
 

神奈川県の米海軍横須賀基地が、南シナ海や東シナ海、台湾海峡などの中国近海における米軍の「航行の自由作戦」をはじめとした軍事的挑発行為の拠点として強化されている。このまま米軍の活動がエスカレートすると不測の事態も考えられ、あらためて在日米軍基地の危険性が懸念される。

 

 

香港の『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』紙11月3日付によると、中国近海上における米軍機の偵察飛行は昨年で約1000回だったが、今年はすでに2000回を突破。合わせて、米海軍による近海での軍事活動もより活発化している。

今年に入ってから、南シナ海での米空母の活動は12回を記録。今夏以降は断続的に軍事演習が続き、特に10月2日から3日にかけて沖縄南西で実施された日米英の合同演習は、米空母「ロナルド・レーガン」と「カール・ヴィンソン」、英国の空母「クイーン・エリザベス」が率いる3つの空母機動艦隊が集結する、かつてない規模となった。

問題は、こうした米軍の対中国作戦の不可欠な拠点として横須賀基地が機能しているという点だ。

同基地は、米海軍が本土以外で唯一展開する空母の常駐拠点で、「ロナルド・レーガン」の母港になっている。また10月の演習前に他の米英2隻の空母とそれに随行した艦船も入港しており、米海軍の最大戦力である空母機動艦隊の対中国作戦は、横須賀基地抜きには実行不可能だ。

巡航ミサイル1000発超

横須賀基地には、空母以外にも、こうした演習にたびたび加わっている米海軍の巡洋艦が3隻、駆逐艦が8隻常駐している。巡洋艦は地上攻撃用の巡航ミサイルを120発以上、駆逐艦は90発前後を搭載する。総数で1000発を超える巡航ミサイルが、横須賀基地から中国本土を狙う態勢にある。

昨年までは6隻だったが、今年に入って3隻が他の基地に移転。代わりに5隻が新たに配備され、合計8隻となった。その多くがレーダーやミサイル防衛能力などが強化されたタイプとされ、質面でも戦闘力が向上した。

さらに、米海軍が台湾海峡や南シナ海で意図的に中国を挑発しているが、こうした行動にも、横須賀基地は欠かせない。南シナ海での「航行の自由作戦」は、中国側の抗議を無視して、判明しているだけでも今年11回、実施されているが、うち9回が横須賀基地の配備艦によるものだった。

加えて、横須賀基地に寄港する艦船も多国籍化している。米国はこの9月、中国に対抗する米国・英国・オーストラリア3国の軍事同盟「AUKUS」の結成を発表したが、英国の空母機動艦隊のみならず、オーストラリア海軍艦も今秋、横須賀に寄港している。今後、横須賀基地が「AUKUS」の対中国作戦の実質的な出撃拠点になりかねない。

11月5日にはドイツのフリゲート艦が横須賀基地に寄港。同艦は8月に、インド洋のアデン湾で海上自衛隊との合同演習を実施しており、寄港前日には日本近海でも演習を実施した。ドイツは、インド太平洋地域での1年半から2年間の滞在を検討している。

米英両国やドイツも加盟する北大西洋条約機構(NATO)は、6月の首脳会議で採択された声明で、中国を名指しして「ルールに基づく国際秩序とNATO加盟国の安全保障に関連する地域に挑戦している」と批判。米国主導の対中国包囲網に加わる意思を公然と示したが、今後はNATO加盟国海軍艦の横須賀寄港の増加も予想される。

破局を回避する外交を

一方で昨年10月、米国の代表的な平和運動家であるジョゼフ・ガーソン氏や、高名な軍事評論家のマイケル・クレア氏、日本研究で知られるコーネル大学のマーク・セルダン教授ら11人が、「米中間の新たな冷戦を防ぐよう求める声明」を発表。その中で、「米海軍による中国近海の示威行動の増加」について、「米国の脅迫に対抗する均衡した能力がない中国を怯えさせ、面目を失わせようとする意図がある」と指摘している。

実際、エスカレートする米軍の「示威行動」が、紛争の「平和的手段による解決」を定めた国連憲章に反するのは間違いない。またイラク戦争に象徴されるように、「ルールに基づく国際秩序」を破壊し続けているのは米国自身だ。そもそも、南シナ海で中国と近隣諸国が領有権で対立しているのは確かだが、米国は当事国でも何でもない。

前述の「声明」は、このままだと「核戦争も含む本格的な戦争に発展する可能性がある」と強く警告しているが、そうした破局的事態をもたらす根源に日本の横須賀基地がなりつつある。今こそ、米国の危険な動きに同調しない外交政策が求められている。

 

 
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