2021年5月21日
社会民主党幹事長 服部良一
- 本日、いわゆる「病床削減・病院統廃合法」である医療法「改正」法案が参議院本会議において与党などの賛成多数で可決、成立した。「病床がひっ迫している!」「医療従事者が確保できない!」というコロナ感染症の最中に、この事態に逆行する悪法が、極めて不十分な審議のままに採択されたのである。社民党は国民のいのちを脅かし、医療従事者の疲弊化を進めるこのような悪法の具体化を許すわけにはいかないとの立場から、法案に反対した。
- 主な内容は、病床を削減すれば国の消費税財源195億円から給付金を支給するというものである。給付額は、病床稼働率(連日空きベッドがない状態は稼働率100%となる)の高さに応じて単価を引き上げている。稼働率50%なら単価1床あたり114万円だが、90%上なら単価一床あたり228万円の倍額になる。つまり空きベッドのない病院の病床削減ほど交付金を高くするのである。しかも、「2~3床減らしたい」などは許さず、交付金の対象を「稼動している病棟の病床の10%以上を削減する場合」としている。また、病床削減を基本にして病院統廃合も進めるとしている。これでは、感染症拡大時どころか、通常でも「病床ひっ迫」となり、救急搬送も含めて「空きベッドがなく入院の受入れ拒否」になることが懸念される。そもそも、政府は「社会保障の充実の財源」を口実に消費税を増税してきた。今回は医療削減の財源にしている。また「日本の病床は諸外国に比べて多すぎる」との原説も、日本医師会の調査などから、現在の実態からも事実と全く異なることがわかっている。
- 日本の医師養成数はOECD諸国では最低数だが、さらにそれを進めようとしている。2023年の医師養成数の削減を前提に、過労死ラインを超える医師の長時間労働を認めた。36協定では年960時間だけでなく、年1860時間まで可能としている。しかも医師の不足を補うとして「タスク・シフト/シェアの推進」などとして医師の医療業務を検査技師や救急救命士に担わせるとしている。これでは医療の質を落とし医療事故を多発させることは言うまでもない。
- 悪法は成立したが、職場と地域の闘いはこれからである。病床削減は、建前として「自主的に削減を望み、そこに国は財政支援する」としている。また36協定は、もちろん労使間の協定で成立する。社民党は、いのちを脅かす悪法の内容を職場地域に周知し、その具体化を阻止するために医療従事者をはじめとする広範な市民と手をとりながら全力で闘う決意である。