【談話】アフガニスタンへの拙速な自衛隊機の派遣に抗議するー政府は情報公開と説明責任を果たせー
2021年8月25日
社会民主党 幹事長 服部良一
イスラム主義勢力タリバーンが首都カブールをはじめアフガンのほぼ全土を制圧し、米国が主導して支えてきた政権は崩壊した。空港には国外に脱出しようとする在留外国人や現地スタッフなど関係者が殺到、混乱を極めている。
米国の中枢を襲った2001年の9・11同時多発テロから20年にして、米国史上最長の「戦争」は完全に破綻した。この間、2500人近くの米兵が命を落とし、英、カナダ、独などNATO加盟国をあわせると3600人が犠牲となった。5万人を超えるタリバーンなど武装勢力が死亡し、アフガン政府軍・警察・民間人の死者も11万6000人に及ぶと言われる。すでに米国が費やした戦費は2兆ドルを超え、20年間に費やされた膨大な資金や人的犠牲はいったいなんのためだったのか。米国の責任は重い。
9・11テロの後、悲しみと怒りに燃えた米国は、「テロとの戦争」にひた走った。国際社会も、テロ組織「アルカイダ」をかくまったとしてタリバーン政権を倒し、アフガンを再建しようとした。自衛隊も海上阻止行動に参加、事実上の参戦国となった。米国がいかに政府軍強化を図り侵略によって外からの価値観を押し付けても民政が定着することはなかった。世界最大の軍事大国は世界の最貧国との戦争に敗れたのだ。
社民党は当初から、①いかなるテロも絶対に認めない、②米国等による「軍事報復」には反対、③テロは「戦争」では止められず、そもそもテロを生む社会自身を変えなければならないと主張し、自衛隊の派遣に強く反対してきた。
政府は8月23日国家安全保障会議を開催し自衛隊の輸送機を派遣することを決定した。唐突感が否めない上に、情報公開も不十分で説明責任も果たしていない。
- 大使館の邦人職員12名はすでに英軍機でアラブ首長国連邦に脱出済みであり、国際機関で働く少数の日本人と大使館現地スタッフの救援と言うが、どれだけの救援の要請があるのか実態がはっきりしない。しかも空港に安全にたどり着ける保障もない。
- 今回外国人を救出する初めてのケースとなる。希望者を日本に難民として受け入れる方針を明確にすべきではないか。
- 自衛隊の海外への派遣要件について、安全確保と、当事国の了解が必須であるが、空港については米軍が治安維持をしていると言うものの不安定であり、また日本がタリバーン側とどこまでの接触や合意がなされているのか不明である。24日にはG7の緊急首脳会議がオンラインで開催されたが、G7の会議を前にした場当たり的な派遣決定だったのではないのか。
- 今回、海外での戦闘を前提に訓練されている陸自中央即応連隊が派遣されるが、なぜその部隊なのか不明である。現地の情報収集も不十分な中、自衛隊派遣ありきの決定ではないのか。
自衛隊の海外派遣については特に慎重でなければならず、情報や情勢の分析と判断、派遣の必要性や態勢、期限など国会での十分な議論と国民的な合意が必要である。説明責任が果たさないままの拙速な自衛隊派遣に抗議する。