2021年12月6日
社会民主党 幹事長 服部良一
- 12月6日、第207回臨時国会が召集された。会期は12月21日までの16日間の予定である。6月に閉会した第204回通常国会以来、自民党総裁選挙、衆議院総選挙をはさみ、約半年ぶりの本格的な国会論戦となる。十分な説明もないままオリンピック・パラリンピック開催を強行し、新型コロナ感染に対する無為無策によって多くの人々の命を失わせながら、憲法53条に基づく野党の臨時国会召集の要求を拒否し、政権維持のための党内政治に終始してきた政府・与党の責任は重大である。
- 岸田文雄氏は、10月4日首相に就任すると、岸田総裁誕生の原動力となった細田派・麻生派・竹下派ら主要派閥を登用し岸田内閣を発足させた。俗に「3A」と称される安倍晋三・麻生太郎・甘利明氏らの意向を重視した姿勢から安倍傀儡政権とも評された岸田内閣が、モリ・カケ・桜など安倍元首相以来の「説明しない政治」を転換することができるかは大いに疑問である。臨時国会における論戦を通じて、岸田首相の姿勢を厳しく問いただしていく。
- 今国会では、岸田政権が決定した総額36兆円にのぼる補正予算案が最大の争点となる。「新型コロナの感染拡大防止」、「社会経済活動の再開と次の危機への備え」、「新しい資本主義の起動」、「防災・減災など安全・安心の確保」の4つが柱とされるが、社民党は以下の立場から組み替えを求めて国会審議にのぞむ。
- 新型コロナ感染拡大防止と、社会経済活動の再開が最重要課題であることは当然だが、政府のPCR検査の抜本拡大や医療体制の確立の取り組みはなお不十分と言わざるを得ない。また困窮者への支援策も非課税世帯に限定され、非正規労働者などに行き届くものとはなっていない。また18歳以下への給付金(子育て世帯への臨時特別給付金)10万円のうち半分をクーポンでの支給とするために事務経費が967億円も増えることも問題である。中小企業や個人事業主など対する持続化給付金や家賃支援給付金の再支給も重ねて検討するべきだ。
- 看護師や介護労働者、保育士等の「エッセンシャルワーカー」の賃金引き上げも盛り込まれているが、その水準は限定的で、個人が改善を実感できる内容とはなっていない。岸田首相は、これまでの「新自由主義」的な考え方が多くの弊害を生み、格差や貧困を拡大し、気候変動の背景ともなっていることを認め、その代案として「新しい資本主義」を掲げた。しかし、アベノミクスの失敗に学ぶこともなく、なんの具体策もないまま、「成長も分配も実現する」といっても期待することは出来ない。新自由主義的な資本主義にかわるのは「新しい資本主義」ではなく、「社会民主主義」であることを強く訴えたい。
- 補正予算案では「安全・安心」を掲げて防衛費に7738億円を盛り込んだ。22年度当初予算の概算要求に盛り込んだ装備品調達費を前倒し計上するなどして、2次に渡って補正を組んだ18年度の4545億円を超える過去最高額である。21年度当初予算の5兆3422億円とあわせると前年度比7%増の6兆1160億円に及ぶ。防衛予算の総額が6兆円を超えるのは初めてで、岸田政権の防衛力偏重の姿勢は明確だ。当初予算編成以降の緊急性を要件とする財政法の補正予算の趣旨からみても許されるものではない。
- 自民党は従来の「憲法改正推進本部」を「憲法改正実現本部」(古屋圭司本部長)に改組して推進体制を強化した。日本維新の会や国民民主党を巻き込んで憲法審査会での議論促進をはかる方針だ。総選挙中に行われた世論調査で国民が求めた政策は経済・財政政策や新型コロナ対策、社会保障制度などであり、改憲を求める声は少数であり、国民の多数は改憲を求めてはいないことは明らかである。東アジアの軍事的緊張を緩和するために必要なのは9条改憲や日本の防衛力増強ではなく9条に基づく外交努力である。国会に求められるのも、改憲ではなく憲法に基づく政治の実現ではないか。
- 自民党内のハト派(リベラル)を自認してきた岸田首相の下ではあるが、安倍元首相と連携しタカ派色を強く打ち出す高市早苗政調会長など政府・与党の体制全体を見れば、憲法改正、敵基地攻撃論、選択的夫婦別姓反対など保守的な政策を繰り出してくることが想定される。今、政治に必要なのは安倍・菅政権の清算である。その亜流である岸田政権には展望もなく、日本の政治を託すこともできない。社民党は、国民の命と暮らしを守る抜本的な対策の確立に向けた国会論争をめざし全力で奮闘する決意である。
以上