【談話】新型コロナウイルス感染症の感染症法5類引き下げ、国の責任後退は許さない
2023年1月30日
社会民主党 幹事長 服部良一
1月27日、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部(本部長・岸田首相)は、新型コロナウイルスの感染症法上の分類について、5月8日に現在の「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げることを決定した。また、スポーツ観戦や大規模イベントに関する収容制限を解除することも決定。即日運用で27日から満席で大声を出して応援することが可能となった。
オミクロン変異株が猛威をふるうなか、29日、国内では1カ月の死者数が初めて1万人を超えた。病床の使用率も上昇し、19日時点で東京、大阪は50%、県によっては80%を超え、医療機関は依然逼迫した状態にある。世界保健機関(WHO)が、変異株の能力を「現状では最高クラス」と推定し警戒を呼びかけている最中、あたかもコロナが収束するかのような決定は非常に危険であり納得できない。政府は決定の裏付けとなる科学的根拠をまったく示さず、国民への情報提供も責任説明も果たしていない。
感染症法は感染症を危険性の高い順に1~5類に分類している。新型コロナは別枠の「新型インフルエンザ等感染症」に位置付けられ、「2類相当」で対応している。5類に移行すれば、入院勧告、感染者や濃厚接触者の外出自粛要請など同法の措置ができなくなる。ワクチン接種、患者の入院や外来診療、検査などの公費負担もなくなる。政府は医療費の公費負担を期限を切って継続するというが国民の負担が重くなることは必至だ。
医療機関の負担もさらに増す。保健所や自治体が行っている入院調整は、各医療機関の間で行うことになり混乱が予想される。「発熱外来」は廃止され一般医療機関で受診するようになるが、その体制が作れるかどうかは疑問だ。現在も医療機関では週に200件前後のクラスターが発生している。コロナ確保病床の補助や診療報酬の加算が縮小されるため、コロナ患者を診る医療機関が激減する不安もある。
さらに、新型インフルエンザ等対策特別措置法の適用からも外れるため、政府と都道府県の対策本部は廃止され、緊急事態宣言やまん延防止など重点措置も出せなくなる。
政府が経済活動の活性化を急ぐあまり、無責任極まりない決定をすることは断じて許せない。公的支援の後退は自己責任の強化につながり、弱者切り捨てに他ならない。
いま必要なのは、医療体制の強化であり、高齢者施設などへのPCR検査を徹底し第8波を沈静化させることだ。社民党は国の責任を後退させる決定に抗議し、いのちを守る視点から決定の見直しを迫っていく。
また、感染者の把握方法が、昨秋の全数把握の中止に続き、さらに緩和され「定点把握」に変わる。コロナ感染症が拡大して丸3年、政府がいまだに有効な施策が打てないのは、科学的なデータの集積や検証をきちんと行っていないことにある。社民党は、根拠に基づく有効な施策とそのベースとなる体制づくりを急ぐよう政府へ要求していく。
以上