声明・談話

【談話】「経済安保情報保護法案」衆議院通過に抗議する

2024年4月9日

社会民主党

幹事長 服部 良一

 

  1. 本日、衆議院本会議にて経済安保版秘密保護法である「重要経済安保情報保護活用法案」が通過した。本法案は、経済安保の名の下に私たちのプライバシーを政府が調査できるようにする身辺調査法案であり、民間企業の従業員や大学などの研究者、その家族など数十万人が対象とみこまれ、国民の知る権利を阻害し基本的人権を侵害するものである。戦争できる国つくりのための国家統制強化でもあり、社民党は断固反対である。
  2. 本法案の最大の問題点はそもそも「経済安保」の概念が不明確であり、何が秘密となるかがわからないこと、秘密とされた情報を取り扱う者のみならずその家族・同居人らの国籍なども政府が調査し調査情報を保持できるようになることだ。本法案は、①経済安保上の機密情報を「重要経済安保情報」と政府が秘密指定し、②政府の長は「重要経済安保情報」を取り扱う者の身辺を調査(適性評価)でき、③「重要経済安保情報」を漏洩した者へ5年以下の拘禁刑などを科す ― という内容だ。政府は自由に解釈して秘密指定ができ、かつ法改正や運用などによって重要経済安保情報が恣意的に拡大される恐れがある。
  3. 「重要経済安保情報」を取り扱う者の身辺を調査できるセキュリティークリアランス(適性評価)制度の創設について、取り扱う者の国籍、家族情報、犯罪歴、飲酒歴、精神疾患などを調査でき、家族の氏名や国籍までも調べられる。調査には本人の同意が必要だが、同意しなかった場合、配置転換など不利益な扱いを受ける可能性が高く、同意は有名無実である。労働法制、労働者保護にも影響する法案だ。また、調査した情報は内閣総理大臣が設置する情報機関に蓄積される。これら個人情報が適切に管理されるかの保障もない。
  4. 大川原化工機事件では、軍事転用可能な噴霧乾燥機を中国や韓国に輸出したと外為法違反に問われたが、事件を担当した警視庁警部補が「事件は捏造」と証言するなど判決でも違法捜査と断定された。「秘密」の名のもとに事実が隠蔽されたり、恣意的な捜査や弾圧がまかり通るようなことになっては民主主義や人権は成り立たない。
  5. 本法案は政府による恣意的運用を可能としプライバシー侵害が著しい悪法である。修正案では重要経済安保情報の指定・解除、適正評価の実施、適合事業者の認定状況について国会への報告と公表を義務付けし、また付帯決議では「対象者のプライバシー権が侵害されることのないよう十分に留意」とされたが、果たしてどこまで担保できるか疑問だ。この法案が出された背景にはF35戦闘機など兵器の国際共同開発に日本が参画し厳しい情報管理を求められることがあり、そもそも殺傷兵器の輸出が日本国憲法の理念に違反しているのは明らかである。戦前の歴史を紐解けば、国家総動員法(1938年制定)の秘密保護規定の蒸し返しに他ならない。
  6. 以上社民党はこの法案には反対であり、しかし衆議院「立憲民主党・無所属」会派が法案に賛成したことから、本会議採決を退席した。今後引き続きこの法案の危険性を広く訴えると同時に、参議院で廃案をめざし力を尽くしていく。

以上