【談話】食料・農業・農村基本法改正法案の成立に抗議する
2024年5月31日
社会民主党
幹事長 服部 良一
改正食料・農業・農村基本法が5月29日、参議院本会議で自民、公明両党と日本維新の会の賛成多数で可決、成立した。1999年の制定から四半世紀を経て初めての改正であった。疲弊する農民には、この改正に今後の農業の行方を託したいという思いがある中での国会審議であった。
だが、これほど農業生産基盤が弱体化しているにもかかわらず坂本農相がそれを当初否定し、野党から過去の政府見解との矛盾を突かれ発言を撤回し謝罪したことに端的に表れているように、改正法案を提案した農水省・政府は農業生産基盤の現状を正しく認識していないことが明らかだ。
農業従事者が2023年で116万3500人と、食料・農業・農村基本法制定時の99年に比べ半減し、耕地面積も429万7000ヘクタールで、99年から56万9000ヘクタールも減少した。このままでは、日本の農業生産基盤は崩壊に向かうしかない状況であることを、農林省・政府は直視していない。従って、改正法案の具体的中身も、農民を激励し、今後の農業への展望を指し示すものとはなっていない。
まず、食料安全保障の確保といいながら、そのための最有力手段である食料自給率を中核的目標から、数ある目標の一つに格下げし、安定的な輸入による食料確保に重点を置いてしまった。食料自給率の向上を脇において、何の食料安全保障か。
次に、食料の合理的な価格については持続的な供給が行われるように、農業者・食品事業者・消費者等が決めるとしている。これでは、市場に委ねるという現行制度の踏襲に過ぎず、生産者が生産し続けるほど赤字が出るという現状を変えることにはならない。やはり、EU加盟のどの国でも採用している直接支払制度の導入をこそ法案に盛り込むべきであった。日本でも2010年に導入したことのある戸別所得補償制度を復活すべきである。財源には、24年度で7.9兆円にも膨らんだ防衛費を大幅に削減し、充てればよい。
憲法9条を有する平和憲法を持つ日本であるからこそ、農水予算を大幅に増やし、食料自給率の向上を通じた食料安全保障の確立を図るべきである。
今回の食料・農業・農村基本法改正法案の成立に強く抗議するとともに、日本から農業と農村を消滅させないために現行農政の大転換を求め、声明とする。
以上