声明・談話

【談話】地方自治法改正案成立へ抗議する

2024年6月19日

社会民主党

幹事長 服部 良一

 

  1. 本日、参議院本会議で地方自治法改正案が成立した。本改正は、「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」に国民の生命保護に必要な対策を国が地方自治体へ指示できる「指示権」を創設することを主としている。社民党は、国と自治体の対等関係を崩壊させ、地方自治を失わせる本改正に対して強く反対し、成立へ断固抗議する。
  2. 本改正は、昨年12月に地方制度調査会からの答申を法制化したものだ。答申では、2020年の新型コロナウイルス感染拡大時に、大型客船内で集団感染した際に、当時の個別法では想定外の事態であったため、国が必要な指示を自治体へ出せなかったことで、患者を搬送することが難航したことを教訓に、「大規模な災害、感染症のまん延などの国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」に、国が自治体へ指示を出せるように地方自治法を改正するべきだと指摘した。答申に基づき、改正案では大規模な災害、感染症のまん延など「国民の生命等の保護のために特に必要な場合」で、かつ個別法で対応できない場合に、閣議決定を経て国は自治体へ指示することができるとした。
  3. 本改正の問題点として、まず立法事実が存在しないことである。答申で指摘したコロナ禍での国と自治体との調整をめぐる問題については、2022年の感染症対策法改正により、都道府県知事に対する厚労大臣の指示権が創設された。また、自然災害については「災害対策基本法」により国が自治体に指示できる。そのため、松本剛明総務大臣は個別法で対応できない事態について問われた際に、「現時点で具体的に想定しうるものはない」と答弁した。

     第二の問題点として、「地方分権一括法」で「対等・協力」関係と位置付けられている国と自治体との関係を上下主従関係へと変容させることだ。第三の問題点は、国の指示が正しいとは限らず、恣意的な指示の恐れがあることだ。2020年3月に新型コロナウイルス感染拡大に伴い、当時の安倍晋三首相が全国の自治体に一斉休校を要請した。感染状況は各地によって全く異なる状況であったにもかかわらず、国からの一律的な要請は各自治体で混乱に陥った。本改正では、指示を出す前に自治体へ意見の提出を求める規程があるが、努力義務に過ぎない。閣議決定のみで指示でき、国会の関与は修正案で追加された事後報告だけである。

  4. 以上のように、地方自治を奪い去る本改正に対して社民党は断固反対である。本国会は、経済安保版秘密保護法が成立し、有事下の農業法制も成立した。本改正も有事を想定した法整備であるのは明らかだ。衆議院総務委員会にて、松本総務大臣は武力攻撃事態等へ本改正案に基づく関与を行使することは「考えていない」と答弁しているが、信用ならない。沖縄辺野古の国の代執行強行をみれば明らかだ。戦前内務省が地方の首長の人事を握り国=省の命令で自治体を従わせてきた中央集権体制の復活を許してはならない。

     社民党は、本改正の運用を厳しく監視し、「指示権」の廃止に向け尽力していく。

 

以上