2024年6月20日
社会民主党
幹事長 服部 良一
- 6月14日、参議院本会議で「出入国管理法改正案」と「外国人技能実習法改正案」が成立した。本改正は、「技能実習」の在留資格を廃止し、就労を通じた人材育成及び人材確保を目的とする新たな在留資格である「育成就労」を創設することを主としている。しかしながら、永住許可制度の適正化を理由とし、永住許可の新たな取消事由を追加するなど問題点を多く抱えており、在留外国人の地位を一層不安定化させる本改正に対して、社民党は断固反対である。
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発展途上国への技術移転による国際貢献を目的としていた「技能実習」は、技能実習生を安価な労働力として劣悪な労働環境で使い捨てされる事例が多発し、人権侵害の温床となってきた。本改正は、「技能実習」を廃止し、人手不足分野における外国人育成と人材確保を目的とした「育成就労」制度を創設する。また、技能実習で定められていた厳しい転籍制限の緩和や悪質ブローカー対策なども盛り込んでいる。
しかしながら、技能実習生問題に携わっている弁護士らは本法改正案に対して、制度の看板をかけ替えたに過ぎない「技能実習存続法案」だと批判している。転籍制限の緩和については就労開始から1年経過で可能となる一方で、業種によっては当面は最長2年の転籍制限を設ける。また、一定レベルの日本語能力試験に合格する条件も課されている。これでは、現状でも問題になっている悪質な職場からの移動が難しいままである。また、海外の送り出し機関と国内の受け入れ先を仲介しつつ、受け入れ先の事業所を指導・監督する「監理団体」が、「監理支援機関」へ変更される。さらに、「監理団体」への監督機能強化策として、外部監査人の設置を義務化するが、選定は監理支援機関に委ねられる。甘い監査がとなるのではないか、実効性に疑問が残る内容だ。
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そして、本改正の最大の問題は、永住外国人が一定の罪を犯した場合や税金や社会保険料を故意に支払わない場合に永住許可を取り消せる規定が設けられることだ。政府は、育成就労創設により外国人の受け入れが拡大するため、永住許可要件を一層明確化し、永住許可制度の適正化を図るためであると説明している。しかし、永住許可は原則10年以上の在留や安定した収入、税金や社会保険料の滞納が無いことなど、厳格に審査された上で受けている。政府は、あくまで故意に税滞納等した場合に取り消しをすると説明しているが、全く信用できない。そもそも、税滞納等へのペナルティは日本人と同様に扱うべきである。永住外国人のみに、永住許可取り消しという非常に厳しい制裁を科すことは外国人に対する差別を助長するものである。しかも、永住権取り消し規定を新設する事由となる永住者の税や保険料の滞納状況に関する統計について、小泉龍司法相は「永住者全体の調査は困難」と答弁した。立法事由となる根拠が無いにも関わらず、永住権取り消し規定を設けることは論外である。
家族帯同に付いても、無期限就労ができる「特定技能2号」では可能となるが、育成就労3年間と特定技能1号の5年間の計8年は家族帯同は認められないのも大きな問題だ。
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以上のように、本改正は日本国内で生活基盤を築いている永住外国人の地位と生活を不当に脅かすもので、政府がめざす「共生社会の実現」と真っ向から反する内容であり、社民党は反対である。参議院本会議にて成立したことに断固抗議する。
6月10日には、昨年の通常国会で強行採決された入管法改正が施行され、在留資格が無い3回目以降の難民申請者を強制送還できるようになった。昨年の改正と合わせて本改正の成立により、日本の外国人排除政策がさらに強化された。社民党は差別なき共生社会に逆行するこうした動きに今後とも断固反対していく。