声明・談話

【談話】優生保護法裁判熊本地裁判決に対する国の控訴に抗議する

2023年2月6日

社会民主党 幹事長 服部良一

 優生保護法(1948~1996年)下で不妊手術や人工妊娠中絶を強制されたとして、熊本県内の2人が国に賠償請求を求めた訴訟で、1月23日、熊本地裁は、国が主張する除斥期間(不法行為から20年で賠償請求権が消滅)の適用を退け、国に対して原告らに慰謝料の支払いを命じる判決を言い渡した。原告、全国の被害当事者、全国優生保護法被害弁護団等は判決の内容を高く評価し、国に控訴しないよう求めていた。

 しかし、2月3日、国は熊本地裁判決を不服として福岡高裁に控訴した。国の控訴について社民党は強く抗議する。

 本訴訟は、熊本県内に住む渡辺数美さん(78)と川中ミキさん(76)=仮名=が起こした。渡辺さんは幼少期に「変形性関節症」と診断され、10歳の頃、何も知らされないまま睾丸を摘出する不妊手術を強制された。その影響は、身長の伸びが停まらない等、現在も続き骨粗しょう症も患っている。優生保護法が定めた疾病の対象、術式から逸脱した手術だ。川中さんは第2子を妊娠していた24歳頃、第1子の障害を理由に中絶と不妊手術を強制された。

 本判決は、優生保護法が規定した障害者らに対する強制的な手術について「極めて非人道的だ」と非難し、子どもを産み育てるか否かの自己決定権を侵害したとして、幸福追求権(憲法第13条)や法の下の平等(同第14条)に反すると判断した。

 国の除斥期間の主張については、証拠の資料の散逸、消滅を招いた責任は専ら同法を制定、運用した国にあって除斥期間の規定を適用する前提の一部を欠くと退けた。「憲法に違反する優生条項に基づき重大な人権侵害を受けた被害者の救済よりも法的安定性の確保をあえて優先させることを許容するものではない」と明確に示したことは高く評価できる。

 全国10地裁・支部で起こされた同種訴訟19件のうち、すでに1審判決が出た7件はいずれも除斥期間の適用などを理由に原告が敗訴した。今回の1審勝訴は大きな成果だ。

 また、2022年2月の大阪高裁判決と同3月の東京高裁判決では除斥期間の適用を一定期間制限して国に賠償を命じている。本判決では、さらに踏み込み「著しく正義・公正の理念に反する特段の事情がある」と適用自体を排したことは画期的である。

 国が、熊本地裁判決を真摯に受け止めることなく控訴したことに怒りを禁じ得ない。生涯にわたる被害を負った原告らの人権を無視するものであり抗議する。

 原告、被害者らは高齢化している。一刻も早く、国がすべての関連訴訟について責任を認め、全面解決に向けた行動をとるよう強く要請する。あわせて、社民党は一時金支給法の改正等に尽力していく。

以上