(社会新報4月26日号3面より)
カジノの認定を許してはならない。政府は4月14日、大阪府・市が提出していた、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の整備計画を全国で初めて正式に認定した。ギャンブル依存症など多くの問題を抱えたままの見切り発車となった。
カジノ誘致に前のめりの、地域政党・大阪維新の会が勝利した大阪府知事・大阪市長選からわずか5日後の認定は拙速の極みだ。
大阪府・市のIR整備計画を概観してみよう。同市此花区の人工島・夢洲(ゆめしま)にカジノを含むIRを整備する計画である。米国カジノ大手の日本法人を中核とする事業者と府・市が組んで推進する。大規模な国際会議場や劇場なども設ける。年間来場者数約2000万人、年間売り上げ約5200億円、その80%程度をカジノが占めると大阪府・市は見込む。しかし、コロナ禍の影響もあり、海外ではオンラインカジノが広がり、施設に来場する必要性は減っている。
IRは、第2次安倍晋三政権時代に成長戦略の目玉として法整備が進み、2016年にIR推進法が成立。多くの自治体が誘致を検討したものの、ほとんどが撤退した。
IRの弊害を列挙してみる。第一に、ギャンブル依存症である。韓国北東部のカジノ施設「江原(カンウォン)ランド」の例をみると、依存症に陥った人々の姿は悲惨だ。利用客は韓国人が大半で、外国人客はほとんどいない。カジノ周辺には違法な貸金業などがはびこり、犯罪を誘発する。質屋に貴金属を売り払い、財産を失ってホームレスとなった人々があふれる。質屋を襲う強盗事件が後を絶たない。江原ランドの二の舞になってはならない。
第二は、カジノ業界と政界の癒着だ。すでに汚職事件が起きている。2019年、IR担当の秋元司内閣府副大臣が、カジノ関連企業から賄賂を受け取り、さらに証人を買収した疑いで、東京地検特捜部によって逮捕・起訴され、21年9月に懲役4年の実刑判決が下った(秋元氏は控訴中)。
第三は、公費の投入問題。建設予定地は大阪湾の人工島だ。大阪市は公費投入を否定してきたが、カジノ事業者の要求を受けて態度を変え、有害物質の除去や液状化対策の費用約790億円を負担することになった。同市の負担額はさらに膨れ上がることが予想される。
マスコミ世論調査では、IR誘致への反対意見が半数近くを占める。政府は認定を撤回すべきだ。
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