2023年5月10日
社会民主党幹事長 服部 良一
5月9日、防衛産業基盤強化法案が衆議院本会議を通過した。
昨年12月に閣議決定された「安保関連3文書」の一つ「国家防衛戦略」で打ち出した持続可能な防衛産業の構築、販路拡大を政府が支援するための法案である。
本法案は、日本が戦後堅持してきた平和国家の在り方を大きく転換するものであり、社民党として強く反対するものである。
本法案は主に、①基盤強化の措置-サイバーセキュリティ強化などに取り組む防衛関連企業への財政的支援、②装備移転円滑化措置-装備品等の海外輸出に取り組む企業へ助成金支給、③製造施設等の国による保有-事業継続が困難な企業の施設・設備を国が取得し、民間へ管理委託、④装備品等契約における秘密の保全措置-防衛装備品等に関する情報漏洩への罰則などを規定する。
防衛産業の事業継承が困難になった施設・設備を国が取得することが可能となり、戦前の軍管理工場の復活につながるおそれがある。
また、武器の性能などの秘密を故意に漏洩した場合に刑事罰を設けるが、処罰の対象とされる「装備品等秘密」の要件が曖昧であり、秘密保護法対策弁護団らが反対の声明を発出している。
さらに、武器の海外輸出を進めるために企業への助成も可能となる。
現在我が国では、「防衛装備移転三原則」に基づき、戦車等の殺傷能力を有する武器輸出は米国などの「国際共同開発・生産」の場合に限定しており、弾薬の提供は物資融通を取り決めている国に限定している。取り決めが無い国への輸出は「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」の5分野に限定されている。
政府は本法案の成立後、海外への武器輸出促進のために殺傷能力を有する武器の輸出を限定していた「防衛装備移転三原則」の緩和もめざしており、紛争を助長せず、武器で利益を得る国ではないことを保ってきた日本の平和国家像が破壊される。
「武力で平和は守れない」-軍事力を背景にした「平和」ではなく、平和憲法の理念に基づく「外交」で平和を構築することが日本の在り方である。そのためにも社民党は今法案の成立阻止のため全力で努めていく。2015年強行採決された戦争法へ反対した立憲野党は、戦争法の延長線上である今法案の廃案に向け共に闘っていこう。