2023年5月10日
社会民主党幹事長 服部 良一
5月9日、入管法改正案が衆議院本会議を通過した。
本改正案は、在留資格がなく帰国を拒む長期収容されている外国人を減らすことを目的としている。
そのために、①難民申請回数を原則2回までにする、②長期収容を防ぐために、支援者らの下で生活する「管理措置」制度を導入する、③収容者を3ヶ月ごとに収容の要否を見直す管理措置移行制度を導入していく。
現在、難民申請をすることで送還対象から外れるが、本改正により3回目の申請から送還対象になってしまう。これは日本も加盟している難民条約に反するおそれが強い。難民条約では難民申請者の送還を禁止し、申請回数の制限も設けていない。
また、日本の難民認定率は1%ほどであり、国際的にも低水準である。本来難民として保護すべき外国人を送還させることになる。しかも、難民の認否を判断するのは、出入国在留管理庁(入管庁)である。本改正案では立憲民主党が第三者機関による難民認定審査を求めたが、付則による「設置検討」となり、協議は決裂した。
「管理措置制度」についても、日本弁護士連合会(日弁連)から支援者や弁護士らに対して立場が相容れない役割を強いるものであると批判されている。また、管理措置移行制度もその要否を判断するのは入管庁であり、第三者ですらないことを指摘している。
2年前のほぼ同じ内容の改正案は、市民の反対の声により廃案となった。2021年の名古屋出入国在留管理局で収容され亡くなったウィシュマ・サンダマリさんなど、2017年から2022年の5年間で入管の収容施設で3名もの外国人が亡くなっている。入管庁の非人道的な対応の改善が求められている。それにもかかわらず、迫害される恐れがある難民申請者を強制的に送還できるようにするなど、外国人に対してさらなる非人道的な対応を強化するだけである。
この改正案に対して、各地で反対運動が起きている。4月26日には廃案を求める約19万筆の署名を人権団体・弁護士らが入管庁へ提出した。また、5月7日には東京都杉並区で廃案を求めるデモが行われ、3500人もの市民たちが参加した。さらに、5月9日に閣法への対案として難民保護を目的とする議員立法を立憲民主、社民党など4党1会派で参議院へ提出した。社民党は今後とも国会内外で市民の皆さんとともに闘っていく決意である。