社会新報

「新たな戦前」を止めよう~憲法大集会 有明防災公園に25000人

福島党首が連帯あいさつ(5月3日、有明防災公園)。

4党の国会議員が登壇し、大軍拡反対などのプラカードを掲げた(同)。

 

(社会新報5月17日号1面より)

 

 日本国憲法施行から76年となる5月3日の青空の下、東京・江東区の東京臨海広域防災公園(有明防災公園)で「2023憲法大集会」が開催され、約2万5000人が参加した(主催者発表)。主催は「平和といのちと人権を!5・3憲法集会実行委員会」。(2面に関連記事)

 昨年来、ロシアによるウクライナへの全面侵略戦争が続き、東アジアでの「台湾有事」論も喧伝(けんでん)されるようになった。
 岸田政権はこうした状況下で、憲法9条を「骨抜き」にした「安全保障関連法」(2015年)の第2弾ともいえる敵基地攻撃能力保有と大軍拡路線に突き進もうとしている。
 さらに、この「憲法殺し」と同時並行で改憲の動きも強めるなど、安倍政権と同様に立憲主義を愚弄(ぐろう)し続けている。

「新たな戦前」の分水嶺

 同実行委員会の高田健さんは、こうした現状を捉えて「私たちは今、『新たな戦前』をめぐる分水嶺にある」と警鐘を鳴らし、「絶対に戦争をさせない」と決意を表明した。
 室蘭工業大学教授(憲法学)の清末愛砂さんは、この「新たな戦前」について、「『生きる』という営みにおいて小さな幸せを支える根源を否定する流れ」と思いを語った。
 清末さんは、「安全保障関連3文書」に基づき多額の防衛予算が拠出される一方で、非正規労働者は数十円の時給アップさえ通らない現実を指摘し、「立憲主義の価値の一つである『公平と分配』が否定されている」と批判した。

「台湾有事」論のウソ

 沖縄大学地域研究所特別研究員の泉川友樹さんは、国防上の負担が沖縄に過度に集中している現実を指摘し、「それぞれが責任を自覚し、自らの考える方法で改善に向けて努力していくべき」と訴えた。
 また、昨今の中国脅威論や台湾有事論に対して、日中共同声明(1972年)と日中平和友好条約(78年)で「一つの中国」を確認し合った事実を挙げ、次のように語った。
 「『台湾有事は日本有事』と国会議員が無責任に発言するのは、友好条約の精神にも反する。私たちはこうした発言にあおられることなく、これまでの中国との外交成果を踏まえ、台湾をめぐる問題は平和的に解決するよう促していくべき」
 集会アピールでは、「いま通常国会では、衆参両院で3分の2の議席を占めるに至った改憲勢力によって憲法審査会がひんぱんに開催され、憲法への自衛隊の明記や緊急事態条項の新設など、憲法改悪への議論が強引に進められています」と、厳しい現状認識が示された。

敵基地攻撃の危険性

 続いて、4人の国会議員が登壇。社民党の福島みずほ党首は、岸田内閣が昨年12月に閣議決定した「安保関連3文書」にある敵基地攻撃能力保有について次のように語った。
 「岸田内閣は『集団的自衛権の行使で敵基地攻撃をする』と断言している。自国が攻められていないにもかかわらず、他国を攻撃するということだ。他国から見れば先制攻撃そのものではないか。(そうなれば)日本は相手国から倍返し、十倍返し、百倍返しされるかもしれない。沖縄・南西諸島の人たちは再び戦場になることを心配し、反対している。日本全土が戦火に見舞われることも起こり得る」
 福島党首はこうした危険性を踏まえ、「戦争の準備ではなく、平和の準備をするべき」と訴えた。
 また、今国会で審議が続く軍需産業強化法案について、「海外に武器輸出する際や仕様を変更する際に補助したり、経営的に困難な軍需工場を国有化できるというもの」と指摘し、「憲法9条を持つ日本ではあり得ない」と批判した。
 さらに、審議が続く入管法改悪案についても、「差別排外主義ではなく、共に生きられる社会をつくっていくべき」と訴えた。
 福島党首は好きな言葉として「平和と平等は手をたずさえてやってくる」を挙げ、「戦争と差別排外主義が手をたずさえてやってくる」流れに警鐘を鳴らした。

改憲・大軍拡NO!

 立憲民主党の西村智奈美代表代行、日本共産党の志位和夫委員長、れいわ新選組の櫛渕万里共同代表も登壇し、岸田政権の立憲民主主義否定の言動を厳しく批判した。
 4人の国会議員らは壇上で「改憲 大軍拡NO!」「敵基地攻撃能力いらない」などと記されたプラカードを掲げ、参加者と共に「憲法改悪反対!」「大軍拡反対!」と訴えた。
 この他、入管法問題、馬毛島の軍事基地問題、性差別問題に関するリレートークなども行なわれた。
 集会終了後、参加者らは「台場コース」と「豊洲コース」の二手に分かれてデモ行進し、元気よく声を上げた。

有明防災公園を埋めた25000人が改憲と大軍拡に反対するプラカードを掲げた。

 

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