(社会新報7月12日号1面)
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政府与党がもくろむ、軍事費大幅増や殺傷能力のある兵器輸出の解禁は「死の商人国家」への堕落だとして6月28日、「STOP大軍拡アクション」が参院議員会館で集会を開催。東京新聞の望月衣塑子記者が講演を行なった。
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望月記者は、岸田政権の防衛費倍増について、その場当たり的な姿勢を指摘した。「今月7日にまとめられた骨太の方針でも、防衛財源の記述は見送られた。財源確保のための増税負担の実施時期を2024年以降としていたのを、2025年度以降ということで先延ばしにした」と指摘した。
また、「どうやって財源を確保するのかが見えない法律を通してしまった」として、防衛財源確保法を通した政府与党の無責任さを批判。「東京新聞(6月17日付)が報じたように、防衛力強化資金の税外収入など他の財源からの追加負担も検討されるが、5年で 43兆円という支出の規模だけが先行し、どの財源も今、盤石ではない。野村総研の方も、記事中で『防衛費増に国債を使わないという政府の方針が看板倒れになる』と言っている」と批判。将来世代の負担になるとの懸念を示した。
建設国債を軍事に充当
さらに「岸田政権は、特別会計の余剰金や国有財産の売却で9000億円確保すると見込んでいるが、それは1回だけ。その後どうするのかと野党が追及すると、鈴木俊一財務相は、『2027年以降の財源には残念ながら確実に手当できるというものがまだない』と答弁した。財務相ですら、そこまで言うのか。びっくりした」とあきれた顔を見せた。
岸田政権は今年度予算で、建設国債の防衛予算への充当を認めている。これについて望月記者は、「太平洋戦争の時は、6割、7割の予算を教育や福祉に回すのでなく防衛に本格的に注ぎ込み、結果として悲惨な戦争に突き進んでいった。その反省を全く忘れてしまったかのように、建設国債を軍拡に充てることを始めてしまった」と憤った。
また、望月記者は、岸田政権が防衛産業強化法により、採算性のない防衛関連企業を国有化しようとする一方、教育予算がないがしろにされていると指摘。「東京芸大学生のツイッターへの投稿が話題になった。学費値上げ、学食も値上げ、空調を止められて、冬はカイロや毛布を配るという。今、全国の国立大学の設備がすごく貧相なことになっている」と憤り、「未来のない軍事産業にお金を投資していくのではなく、明るい未来に対する教育社会福祉に投資してほしい」と述べた。
G7で核抑止を正当化
望月記者はG7広島サミットでの取材も報告。
「核なき世界をライフワークとしてきた岸田首相だが、G7首脳声明の中で、核軍縮・不拡散は40ページ中、1ページ以下」「『核兵器は防衛目的になり、戦争と威圧を防止している』との文言もあり、持つべき国が持っていることは正当性があるんだというようにも読める」と、その欺まんを指摘。「(核兵器禁止条約成立への貢献で)ノーベル平和賞を受賞したICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)を代表してメダルを受け取ったサーロ節子さんも広島に来ていて、会見で『失望したサミットだった』『私たち被爆者が体験したことを本当にあのG7の首脳陣は理解してくれたんだろうか』とおっしゃっていた」と報告した。
G7サミットでの大きな議題となったウクライナ支援については、望月記者は「ゼレンスキー大統領は、日本に求めるものは『インフラ等の再建支援』だとして武器を求めてはいなかったのだが、日本から火薬を米国に輸出し、それをもとに米国からウクライナに砲弾を提供するという流れになりつつある」と懸念。また現行の防衛装備移転三原則で、共同開発・生産の場合を除き、輸出できないとされた殺傷能力のある兵器についても、「自公の実務者協議で、機関砲を搭載した陸自の偵察警戒車や、海自の掃海艦が示されている」として、重大な解釈変更が行なわれていることに警鐘を鳴らした。
殺傷能力ある武器輸出の阻止を
集会では、「武器取引反対ネットワーク」の杉原浩司さんも発言。殺傷能力のある兵器の輸出について、「本来であれば、国民投票でもいいようなテーマ。少なくとも総選挙で大きな争点に掲げて信を問うべきこと。その前に与党の秘密協議で決めるなど、絶対ありえない」と、国会閉会中に密室で憲法違反の協議が行なわれていることを批判した。また、「東芝の職場を明るくする会」の海老根弘光さんも発言。「防衛産業の中でも、自衛のためでなく他国を攻撃する武器のことは、仕事としてやりたくないという人が増えている」と語った。
社民党の大椿ゆうこ副党首(参院議員)も発言。「他の野党とも、しっかり横でつながって軍拡の流れを押し返していきたい」と述べた。
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もちづき・いそこ 東京新聞社会部記者。1975年生まれ。2004年、日歯連の闇献金をスクープし、自民党と医療業界の利権構造を暴く。武器輸出、森友学園、加計学園などの問題を精力的に取材。著書に『新聞記者』など。
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【軍拡2法の成立】 今年6月7日、参議院本会議で、武器輸出などに税金を投入する防衛産業強化法が一部の野党含む賛成で成立。さらに同月16日には、防衛財源確保法が自公などの賛成で成立。急速に軍拡を実現するための地ならしが進んでいる。今年4月末から続けられてきた武器輸出拡大に向けた自公両党の秘密協議でも、ウクライナの対ロシア「反転攻勢」支援の名目で、日本が米国に砲弾を提供する方向で協議されていることが報じられているが、複数の世論調査で、武器輸出の拡大に反対する民意が明確になっている。