社会新報

【新春対談】元文部科学事務次官の前川喜平さんと福島みずほ党首~社民党を軸に政権交代が必要~腐敗極める自民党政治の退場を

前川喜平さん(左)と福島党首がしっかりと握手。

 

 

(社会新報1月1日号1面より)

 

 社会民主党の福島みずほ党首は、元文部科学省事務次官の前川喜平さんと新春対談を行ない、昨年の政治状況を振り返り、金権腐敗を極める自民党政治の退場と、政権交代を目指すことで意気投合した。

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 福島みずほ党首 あけましておめでとうございます。毎週、前川さんの東京新聞でのコラムを読むのが楽しみです。2023年という年は、防衛財源確保法と軍需産業強化法、原発推進法が成立するなど、とんでもない年でしたね。

 昨年の臨時国会閉会後に、東京地検特捜部が安倍派と二階派の裏金キックバック問題で強制捜査に着手しています。自民党は一体、いつまで「政治とカネ」の問題を繰り返すのでしょうか。前川さんは昨年や今の政治をどうみていらっしゃいますか。

戦争できる国民作りに反対

 前川喜平さん 12年以降、安倍政権が、やりたい放題で国家主義的な政策とかどんどん進めて、国がつくった道徳を子どもたちに教え込むなど、戦争のできる国民づくりだったと思う。そういう路線を岸田さんは変えてくれるのかなと思ったけれど、全然変えない。むしろ、さらに強力に推し進めているという印象ですよね。閣議決定で憲法違反に踏み込むのが、いま常とう手段になっていますけれど、特に一昨年の暮れに安保3文書が閣議決定された。「専守防衛は守っている」と言いつつ攻撃型の兵器を持つんだということを、はっきり宣言したわけで、実際それが着々と進んでいる。

 その中身は何かと言うと、米国からポンコツ兵器を爆買いしているというようなことで、国民の方に向いた政治には全然なっていない。米国の兵器産業に向いているのではないかという印象ですよね。防衛予算を2倍にして5年間で43兆円にするというのだけど、実際には円安ですから、これからどんどん増えていくのではないでしょうか。それを国民につけ回しにして、増税するなんてことは、許しがたいですね。

 安倍派の裏金キックバック問題は論外ですね。組織的にパーティー券のノルマを超えた分をキックバックして裏金を作るなんて、あきれてものも言えません。安倍派に限らず、岸田派も他の派閥も同じようなことをやってきた。こんな腐敗した自民党に政権を任せるわけにはいきませんね。

給食無償化へお金を

 福島 本当に同感ですね。腐敗した自民党政治を一掃しなければなりませんね。

 予算編成では、24年の概算要求で弾薬・ミサイルの確保が9300億円で、補正予算でも1523億円。子どもたちの公立小中学校の給食を無償化するのに必要なお金は4400億円程なので、もっとお金を回すべきですよね。

 前川 福島さんも閣僚になられた民主党政権の時には、「コンクリートから人へ」と文部科学省の予算が増えて、「いい政権だな」と思っていたんですけど、その後の自民党政権がひどくて、防衛予算ばかり伸びる。教育の予算は抑え込まれています。

 福島 岸田首相は国民の生活に関心がない。安倍政治の踏襲を、何も考えずにやっているんですよね。ただ首相の座に長くいたいだけ。

改憲を口実に解散か

 前川 心配なのは、岸田首相が「憲法改正」を口実に解散総選挙をやりかねないこと。

 福島 経済、経済、経済と言って全然うまくいってないですものね。衆院の憲法審査会では、緊急事態条項で在任期間を伸ばすことができるようとしています。政権を変えたくても、投票できなくなってしまう。

 前川 本当に危ないですよね。国民主権が消えてしまう。政権交代が起きるのが民主主義なのですが、政府与党は政権を維持し続けるために憲法に緊急事態条項を創設して独裁政権を目指す思惑が透けて見えます。やはり怖いのは、戦争が起こると政権の支持率が高まること。イラク戦争の時もブッシュ大統領に対する支持が高まりましたね。政権の支持を固める一番いい方法だと言われるのですが、今、中国や北朝鮮の脅威をあおっていますけども、偶発的な衝突も起こりかねない。米国が始めた戦争で、米国本土は無傷でも日本にある米軍基地が狙われ、その周辺の日本の住民が巻き添えになるという構図は容易に想像されますよ。だから南西諸島の基地化は危険だと思います。安倍政権以降、「台湾の有事は日本の有事」なんて言っていますけども、仮に台湾有事が起きたとしても日本は関与する立場に全くないし、有事が起きないよう努力しないといけないですね。

首相は法の支配無視

 福島 そうですね。イスラエルによるガザの病院への攻撃について、「これは国際人道法違反ですよね?」と岸田首相に質問しても、「法的評価はしない」としか答えないのですよ。それは「法の支配」ではなくて「アメリカの支配」じゃないかと。アメリカに忖度(そんたく)して人の命なんか考えない岸田首相らについていったら、大変なことになりますよね。

 前川 与党も野党も憲法に従うことは当たり前で、憲法に従う中で政策の違いで与党と野党が相対するのが、民主主義の姿だと思うのですけども、日本の不幸なところは憲法を守らない人たちが与党にいること。

 福島 自民党の議員が憲法審査会で「国家あっての個人でしょ」とさらっと言うのですよ。入管法改悪の審議の時も、「人権より国益」なんて言う議員もいました。

 前川 個人より国の方が大事という価値観は昔のもの。2024年こそは政権交代の年と思いますし、その真ん中に福島さんにいてほしいです。

 福島 力を合わせて、政権交代を実現しましょう。本日は本当にありがとうございました。

前川さんは「2024年こそは政権交代の年と思いますし、その真ん中に福島さんにいてほしい」と語った。

福島党首(右)と前川さん。政権交代をめざして共に力を合わせることを確認した。

 

まえかわ・きへい 1955年奈良県御所市生まれ。東京大学法学部卒業。79年、文部省(現・文部科学省)入省。宮城県教育委員会行政課長、ユネスコ常駐代表部一等書記官、文部大臣秘書官などを経て、2012年に官房長、13年に初等中等教育局長、14年に文部科学審議官、16年に文部科学事務次官に就任。17年1月に退官。現在、自主夜間中学のスタッフとして活動。現代教育行政研究会代表。