社会新報

【主張】能登震災が突きつける現実~軍拡よりも災害時にいのちを守れ

(社会新報1月18日号)

 

 最悪な新年の幕開けであった。1月1日16時10分ごろ、能登地方を震源とするマグニチュード7・6の大地震が発生した。石川県志賀町では震度7を観測し、広範囲で震度6弱以上を観測するなど大震災となった。地震後、大津波警報が発令され、津波による被害も起きた。震災による死者は200人を超えており、行方不明者と安否不明者も多数に上る。亡くなられた方々へお悔み申し上げると同時に、安否不明者らの一日も早い救出を望む。
 今回の震災では、能登半島の複数の道路が寸断された。海に囲まれた半島の地形が災いし、近年生じた震災以上に物資の輸送や自衛隊の派遣などで困難を極めている。道路は少しずつ復旧しているが、震災発生から2週間以上も経過し、避難所などで生活している被災者は非常に疲弊している。報道等で避難所の質について指摘されている。避難所の質の確保は、災害対策基本法で定められており、指針なども作成されているが、今なお追いついていない。日本はどの地域であっても避難生活が避けられない災害大国である。全ての自治体の避難所で人間として尊厳ある避難生活を送れるよう、政府は各自治体を支援するべきだ。ありもしない戦争をあおり、軍拡を優先するのではなく、国内で現に多発している災害対策に力を入れるべきだ。また、避難所の質の向上にあたっては、女性や外国人、障がい者らを取りこぼしてはならない。特に、女性は避難所での性犯罪のリスクなどがある。誰もが尊厳ある生活ができる避難所の運営が求められる。
 震災により、志賀町で稼働停止中の志賀原発で多数のトラブルが起きている。前述のとおり能登半島の道路が複数寸断されており、志賀原発事故発生時の避難ルートである道路も一時通行止めとなった。志賀原発で事故が起きていたら、周辺の住民は避難できなかったかもしれない。志賀原発は昨年3月に敷地内の断層が活断層ではないと原子力規制委員会が了承したが、見直すべきだ。そして何よりも、災害大国である日本で原発をこれ以上稼働させることは不可能だ。今こそ稼働中の原発を停止し、廃炉に向けて動く時である。
 能登半島地震は、待ったなしの政策課題を私たちへあらためて突きつけた。そこには岸田政権が強行する軍拡や原発推進は含まれていないのだ。