社会新報

【主張】陸自幹部の靖国集団参拝~政教分離原則を徹底し再発防止を

(2月1日号3面より)

 

 陸上自衛隊の幹部が集団で靖国神社に参拝していたことが明らかになった。1月9日には陸自ナンバー2の幕僚監部副長(陸将)ら数十人が、年始にあたっての「航空機安全祈願」として、「実施計画」を策定した上で参拝した。参加者は時間休をとり私服で行動し、私費で玉串料を納めたというが、一部の人は公用車を利用していたようだ。取材を受けた副長は「毎年の恒例なので」と答えており、陸自幹部の恒例行事となっていたことも疑われている。
 1月8日にも東部方面総監(陸将)など高級幹部3人が制服姿で公用車を使って靖国神社を参拝していたことが分かっており、宮古島駐屯地でも幹部自衛官が公用車で地元の宮古神社を参拝していたことが報道されている。
 憲法はすべての人の「信教の自由」を保障しているが、同時に国家と宗教の分離を厳に義務付け、国や国の機関はいかなる宗教的活動をしてはならないと定めている。防衛省は1974年の事務次官通達で「神祠(しんし)、仏堂、その他宗教上の礼拝所に対して部隊参拝すること」を「厳に慎む」ことを定めている。
 特に靖国神社は戦前、軍国主義の背景となった国家神道の中心施設であり、東京裁判で戦争責任を問われたA級戦犯14人が合祀(ごうし)されている。政治指導者の靖国神社参拝が、戦争への反省を忘れ、軍国主義時代を正当化することにつながりかねないと批判されてきたのは当然だ。旧軍との継続性に疑念が持たれる自衛隊の幹部の組織的な参拝は許されない。
 防衛費の大幅拡大、自衛隊の増強など、防衛力重視の流れのなかで、財政規律の緩みが指摘されているが、自衛隊の意識や規律も緩んでいるのではないか。正月早々の能登半島地震などで現場の隊員は必死の救援活動を続けるなかで、幹部自衛官が政教分離原則に反して靖国神社を参拝し、そのあり方に疑念を持たれるなど言語道断だ。
 木原稔防衛相は、「誤解を招く行動は避けなければならない。判明した事実関係に基づき厳正に対処する」としているが、今回の件を調査するだけでなく、この機会に陸自にとどまらず自衛隊全体として、靖国神社との関係を点検し、再発防止を徹底するべきだ。公用車を使っての集団参拝が「私的参拝」だなどという詭弁(きべん)は成り立たたず、許してはならない。