2024年6月24日
社会民主党
幹事長 服部 良一
- 第213回通常国会は6月23日に閉会した。本国会は「裏金国会」でありまた戦前回帰の「国民統制国会」であった。国民の監視や身辺調査、外国人排除、地方自治を弱め中央集権を強化する法案や、自衛隊と米軍との指揮権を一体化する法案、武器輸出を加速する法案などが成立した。また、自民党派閥による裏金問題に対し、岸田首相が「火の玉」となって信頼回復に努めるとした「政治資金規正法改正」は、大山鳴動して鼠一匹すらでない穴だらけの改正となった。改めて本国会を振り返る。
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1月1日に発生した能登半島等地震等への対応から開会前より衆参で閉会中審査が行われるなど、国会前半の本年度予算案審議は被災地の速やかな支援、復興や物価高対策などが求められた。しかしながら、政治資金パーティーをめぐる裏金など「自民党とカネ」の問題や、盛山文部科学大臣と旧統一教会との関係問題などに多くの時間が割かれ、審議が十分に尽くしきれない事態となった。立憲野党は盛山文科大臣や鈴木財務大臣に対する不信任案を提出するなどした。
初動態勢の遅れ、原発事故との複合災害時の半島部の避難の困難さが浮き彫りになった能登半島地震の教訓は今後の防災政策に大きな課題を残したし、あらためて脱原発の重要性を喚起した。
成立した2024年度予算については、最大の特徴は前年度から1兆1千億円以上増加した7兆9468億円の防衛予算である。一昨年12月、岸田政権は5年間で防衛費を43兆円とする「安保3文書」改定を閣議決定した。この大軍拡路線により、防衛費は2023年度予算から大幅増額している。その内容は、ミサイルや戦闘機など武器の爆買いである。
一方で、岸田首相肝いりの「異次元の少子化対策」は財源をめぐり、後にも触れる「子育て支援金制度」による国民負担を増加させる対応となった。また、今年度介護報酬改定では、全体的には1.59%プラスとなったが、訪問介護等の基本報酬は引き下げとなった。さらに、本年度予算の3割が新規国債発行で構成されている。3月にマイナス金利政策が解除され、利払いが増加していく。将来世代へ負担を押し付ける予算となった。
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法案についても多くの悪法が成立した。
「経済安保情報保護法」は経済安保版の秘密保護法である。秘密情報取り扱う資格(セキュリティクリアランス)のため内閣総理大臣が一元的に行うとされた「適性評価」では、関係する民間企業の社員や大学・研究機関の職員・家族までもプライバシーを調査する身辺調査法である。まさに戦争できる国つくりに向けた国家による国民統制であり、戦前の国家総動員法(1938年制定)の秘密保護規定の再来と言わざるをえない。日米軍事産業の連携強化、武器輸出への態勢構築の一環であり、平和主義やプライバシー権において極めて違憲性の高い立法である。
- 「防衛省設置法改正」は、陸海空自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」を創設するものであるが、日米共同の作戦を指揮可能な日本側の調整窓口であり、「台湾有事」を前提とした米軍と自衛隊の合同司令部創設の目的のためである。それに伴い米軍は在日司令官を格上げすることを発表した。岸田首相は「自衛隊は独立した指揮系統」と繰り返すが、軍事情報と装備に圧倒的な差がある中、自衛隊が事実上米軍の指揮に入ることは明らかだ。
- 「GIGO(ジャイゴ)設立条約」は、英伊との時期戦闘機共同開発・生産・輸出に向けた政府間機関「GIGO」を設立する条約であり、日本はGIGOを通じた輸出も可能になり「死の商人国家」に大きく踏み込むものだ。専守防衛としてきた日本が殺傷兵器である戦闘機の輸出をすることは憲法の平和主義に違反する違憲行為であり、断じて許されない。
- 離婚後共同親権導入の民法改正」は、双方の親が離婚時に合意すれば、子の共同親権を持つことが可能となる。しかし、共同親権導入後に懸念される人権問題など十分な審議が尽くされたとはいえない。虐待やDV対策の不十分さや、父母の所得が合算されることで就学支援金や保育料など社会保障制度への影響も懸念される。子どもの意見や意思を尊重する立法になっているとも言い難い。丁寧な審議がないまま採決を急いだことは許されない。
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「食料・農業・農村基本法改正案及び食料供給困難事態対策法(食料有事法)」は、1999年に制定された基本法を世界的な気候危機など食料安定供給などに対応するとして提出されたが、食料自給率の向上より「安定的な輸入」に力点を置くものとなっており、日本農業の持続性を棄損していると言わざるをえないお粗末な内容だ。社民党は戸別所得補償制度の復活と自給率の50%を早急に達成させるべく訴えてきた。
また「食料有事法」では食糧危機に陥った時、政府が農家に増産や作付けの変更を指示でき、従わない場合の罰則規定も入った。まさに本末転倒の政策である。
- 「子ども・子育て支援法等改正」は、岸田政権の「異次元の少子化対策」を実行するために医療保険料に上乗せする「子ども子育て支援金」を創設するものだ。26年度から3年間で1兆円に上積みし、28年段階で被保険者一人あたり月800円、後期高齢者でも350円、しかも30年代初めまでに倍増を目論む姑息な増税ともいうべき国民負担増である。また、子育て支援だけでは対策は不十分だ。結婚や子どもを持つことは個人の選択だが、結婚したくても子どもを産みたくても経済的にできない現状を変えていかなければならない。
- 「入管難民法改正案及び外国人技能実習法改正」は、外国人労働者の「技能実習」制度を廃止し、「育成就労」制度を創設、外国人の受け入れを拡大するとした。「特定技能2号」では家族帯同の無期限就労が可能となるか、育成就労3年間と特定技能1号の5年間、計8年間は家族帯同が認められない。6月10日に施行される改正入管法では難民認定の申請を2回までに制限し強制送還を可能とし、今回も税金や社会保険料を支払わなかった場合は永住許可を取り消せるとしたことに、人権無視の排除の論理だと当事者を含め怒りの声が上がっている。
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「政治資金規正法改正」は、全くの「ザル改正」の自民党案に公明党が乗り、日本維新の会が乗った。企業団体献金も政治資金パーティーもやめるとも言わない。それどころか政策活動費など領収書の公開は10年後、しかも黒塗りが可能であるという内容で、これでは実効性が全くないのは明らかである。また、自民党と日本維新の会の合意文書をめぐり、衆議院で賛成した日本維新の会は参議院では反対するなど迷走した。
裏金の真相を明らかにしない、誰も責任を取らない、改革もいいかげんでは自民党政治への信頼は地に落ちるのは当然だ。
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以上、本国会は戦争体制に向けた悪法や、人権を蹂躙する悪法が多く成立した。しかも、これら悪法の一部、特に安全保障関係の法案へ立憲民主党が賛成した。社民党は同じ会派であるが社民党が反対する法案の採決では退席した。社民党は、平和憲法の理念に逆行する法案、戦争準備につながる法案には断固反対であり、ぶれずに護憲の信念を貫いていく。
岸田政権は支持率を大きく下げ通常国会会期末解散を断念、社民党はじめ野党は裏金・金権政治一掃を求め衆議院解散を求めてきた。社民党は予想される今秋の総選挙を見据え全力で選挙準備を進めている。21年の総選挙、22年の参院選と少しずつ積み上げてきた成果をさらに確固たるものにするためにも、必ず衆院選に勝利していく決意である。
日本を「新しい戦前」にしないためにも、平和憲法の改悪を阻止し、くらしが一番の政治をともに創りましょう!皆様のご支援を心からお願い致します。
以上