声明・談話

【談話】与党による衆議院議員定数削減法案の提出にあたって

与党による衆議院議員定数削減法案の提出にあたって

2025年12月11日 社会民主党全国連合幹事長 服部良一

 

自民党と日本維新の会は12月5日、衆議院議員の定数を45以上削減することを内容とする法案を衆議院に提出した。「実効性を担保する措置」として、1年以内に選挙制度改革に関する与野党協議がまとまらなければ、小選挙区を25、比例代表を20、それぞれ自動的に削減することが盛り込まれている。

この「自動削減条項」とも言うべき規程は熟議の否定に他ならない。そもそも、なぜ1年なのかの根拠が全く見いだせない。現在の衆議院議員の任期は2028年10月まで残っており、まだ3年近い時間がある。選挙制度という議会制民主主義の根幹にかかわる問題で、議論の期間を拙速に区切るのは極めて問題である。

また、自民党と日本維新の会は当初、比例代表のみ50議席を削減するという方向性を示していた。だが、比例代表のみの削減は、多様な民意の切り捨てであるとともに、小選挙区での議席獲得割合が高い自民と維新を有利にするためのものといった批判が巻き起こった。そうした批判を気にしてなのか、自民と維新は唐突に、今度は小選挙区を25、比例代表を20削減するという案を示してきた。

比例代表のみ50削減にしろ、小選挙区25・比例代表20削減にしろ、その数字に何ら理論的な根拠はなく、高市早苗首相も11月13日の参議院予算委員会で、衆議院議員の定数を1割削減するという目標の根拠を問われ、「納得感のある規模」などとしか答弁できなかった。そもそも、衆議院の現在の定数465は戦後最少であり、最も多かった定数512の時と比較して47名も少ない。

人口の減少を理由に国会議員の定数を削減すべきという声も聞かれるが、衆議院議員の定数が過去最大の512となった1986年当時の人口は1.22億人であり、2024年の1.24億人と大差ない。人口の増減とは無関係に、この間も衆議院議員の定数は削減され続けてきた。

国際的に比較しても、人口約6960万人のイギリスの下院(庶民院)は定数650、人口約6670万人のフランスの下院(国民議会)は定数577、人口約8410万人のドイツの下院(連邦議会)は定数630となっており、人口比で日本の衆議院の定数が多過ぎるという批判は当たらない。人口約3.47億人のアメリカの下院は定数435で日本の衆議院より少ないが、そのぶん州議会の定数が多く、ほとんどの州議会は上院と下院との2院制を取っている。

歳出削減の観点からの議員定数削減論も聞かれるが、定数の削減により政権に厳しい姿勢で臨む政党の国会議員が減ってしまっては、国会による行政監視機能が弱体化しかねない。そうなれば、無駄の削減が進まずかえって歳出が増加し、それに伴う増税という悪循環を招きかねない。

自民党と日本維新の会が提出した法案では、小選挙区を25削減するとしており、メディア各社の試算では、20の都道府県で小選挙区が削減される(2020年国勢調査人口に基づく試算)。小選挙区が北海道では12から11に、沖縄県では4から3に削減されるなどと試算されており、地方の声が国政に届かなくなるのとの不安も聞かれる。

都市部でも、小選挙区が東京都では30から27に、埼玉県で16から15に、神奈川県で20から18に、愛知県で16から15に削減されると試算されている。だが、前々回(2021年)の衆院選では、小選挙区の数が埼玉県で15、神奈川県で18、愛知県で15だった。前回(2024年)の衆院選より導入された新しい区割りを破棄し、前々回の区割りに戻せと言うのであろうか。

比例代表20減についても、11のブロックの全てで1~3議席の減となると試算されている。多様な民意が切り捨てられることになるし、地方の声が届きにくくなることも懸念される。民意が多様化し、多党化した現状を鑑みれば、比例代表を削減するのではなくて、むしろ比例代表を中心とした選挙制度への変更も検討されて然るべきである。

そもそも、本来優先して行うべきは「政治とカネの問題」、より具体的には企業・団体献金の廃止であり、国会議員の定数削減は議論のすり替えに他ならない。自民党と日本維新の会との連立政権合意書でも、「企業団体献金の取り扱いについては(中略)現時点で最終結論を得るまでに至っていない」として「高市総裁の任期中に結論を得る」と問題解決を先送りにしている。その一方では、「1割を目標に衆院議員定数を削減するため、25年臨時国会において議員立法案を提出し、成立を目指す」としていることからも、「政治とカネの問題」の隠れみのとしての議員定数削減論と言われても仕方ない。

社民党は、議員定数削減の議論ではなく「政治とカネの問題」の議論を最優先とするよう政府・与党に対して強く求めていく。また、選挙制度についても、拙速な議論で結論を急ぐのではなく、全ての党派・会派の合意を得るべく、時間をかけた検討を行うことを要求するとともに、社民党としても、多様な民意を議席に反映できる比例代表制を中心とした選挙制度を、積極的に提案していく所存である。