【談話】高市首相の「存立危機事態」発言と日中関係について
2025年12月23日
社会民主党全国連合幹事長 服部良一
高市早苗首相は、11月7日の衆議院予算委員会において、岡田克也委員の質問に対して、中国による台湾への侵攻が「戦艦を使って武力の行使を伴うものであれば、どう考えても存立危機事態になり得るケース」であると答弁した。
政府はこれまで、「いかなる場合が存立危機事態に該当するかは、個別具体的な状況に即し、政府が持ち得るすべての情報を総合的に判断する」などと答弁してきた。具体的に「台湾有事」を指し示して「存立危機事態」に言及する答弁は、従来の政府見解を踏み外すものと言わざるを得ない。また、「台湾有事」においては戦争も辞さないという表明に他ならず、極めて軽率かつ不用意な発言であると断じざるを得ない。
安保法制は「存立危機事態」について、「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃」によって「日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」と定めている。だが、国交正常化を定めた1972年の日中共同声明で日本政府は、「『一つの中国』を理解し、尊重する」と明記して、台湾を国家としては認めていない。安保法制をいかように解釈しても、日本が「台湾有事」に参戦できるという解釈は導き得ない。
高市首相の「存立危機事態」発言は、日中平和友好条約や日中共同声明における「一つの中国」の原則を反故にし、中国の内政への介入を宣言したに等しい。当然ながら、「存立危機事態」発言に中国は強く反発し、中国政府は国民に対し、日本への渡航自粛などを呼びかけた。専門家による分析によれば、渡航の自粛によって訪日中国人が大幅に減少した場合、日本の国内総生産(GDP)は0.36%押し下げられるとともに、経済損失は2兆2千億円に達すると試算されるという。中国から日本へのレアアースの輸出の規制などにつながれば、日本経済への影響はさらに重大なものとなる。
政府が開示した内閣官房作成の応答要領では、「台湾有事という仮定の質問にお答えすることは差し控える」などと記載されていたと報じられており、首相個人の判断で持論を展開したことを政府自らが認めたも同然の状況となっている。高市首相は、「従来の政府の立場を超えて答弁したように受け止められたことを反省点として捉える」と12月16日の参議院予算委員会で答弁したが、どう考えても、従来の政府の立場を超えたものと受け止めるしかない。
また、高市首相の「存立危機事態」発言がなされた直後から、首相答弁を引き出した質問者の側の責任を追及するかのような言説も一部に見受けられたが、軽率で不用意な答弁を行った側にすべての責任がある。質問者側に責任を転嫁するかのような議論は、大いに問題である。
報道によれば、中国からの来訪客の減少によって、宿泊や小売り、航空業界では売り上げ減などの影響が既に出ている。日本の安全保障のみならず、日本経済にも深刻な影響を与えかねない高市首相の「存立危機事態」発言は、即時撤回すべきである。そもそも、「存立危機事態」などを集団的自衛権の発動要件と定めている安保法制それ自体が憲法違反の法令であり、廃止しなければならない。
社民党は、高市首相に「存立危機事態」発言の撤回を強く求めていくと同時に、憲法に違反することが明白な集団的自衛権と安保法制の廃止に向け、引き続き取り組んでいく。また、軍事費(防衛関係費)の倍増といった軍拡ではなく、日本国憲法の平和主義の理念に基づく平和外交の考えに基づき、アジアの平和と日中関係の構築に努めていく決意である。