社会新報

膨張する「トランプ帝国主義」~ 侵略・拉致・略奪

 

(2月19日号より)

米国は1月3日、ベネズエラを侵略してマドゥロ大統領とその妻を拉致した。同国に対しては昨年8月以来、「麻薬輸送船」の撃沈や石油タンカーの拿捕(だほ)など米軍による暴挙が繰り返されてきたが、12月初旬に制定した国家安全保障戦略で西半球を米国の「最優先地域」と公言した上で、今回の蛮行が断行された。(芳賀和弥)

 

国際社会を見下した手前勝手な振る舞いからは、ベネズエラと同じ西半球のグリーンランドやキューバをはじめ、今後どこで何が起きても不思議はないと思わざるを得ない。
トランプ政権の性格を最もよく表すのは南アフリカ共和国への非難である。昨年11月、南アで開催されたG20サミットに、米国は同国の「人権侵害」を理由に参加しなかった。トランプ氏は「南アでは白人農民が残酷に殺され、土地が没収されている」と批判した。自らが議長国を務める予定の今年のG20サミットに南アを参加させないとも言う。アパルトヘイト廃絶と同時に新自由主義を受け入れた南アでは、上位1%の所得、資産が急増し、貧富の差が急拡大した。そういう中での土地再分配をめぐる若干の軌道修正にも大げさにかみつくのである。超富裕層が繁栄を謳歌(おうか)する構造に指一本触れさせないというけんか腰が全世界に誇示された。
そして口先にとどまらず腕力を行使したのが、対ベネズエラである。同国では1999年にチャベス氏が政権について以降、富が米国を中心とする外国資本、富裕層に極端に偏在する体制を一掃して、貧しい民衆の生活を引き上げる努力が行なわれてきた。トランプ氏は、自らの庭先でのこのような「行き過ぎ」には断固たる措置を取ることを示して見せた。そして豊富な石油資源に米国大手石油資本が群がろうとしている。

米企業を税制例外に

さらに自国資本優遇の構えを赤裸々に示したのが、法人税率の最低基準を15%とする国際枠組みの中で「米国企業を例外とする」ことを、1月5日に認めさせたことである。最低基準は先のバイデン政権が主導して147ヵ国・地域が合意していたものである。ベッセント財務長官は今回の処置を「歴史的な勝利」とし、「米国の課税主権を維持し、米国の労働者と企業を域外適用による過剰な課税から保護する」とぬけぬけと言ってのけた。
またこれに間髪を入れずに、7日には、トランプ氏は66の国際機関や条約からの脱退を指示する覚書に署名した。これにより米国と米国資本は環境保護や多様性を推進する束縛から「自由」になる。「掘って、掘って、掘りまくれ」(drill, baby, drill!)というかけ声が世界中にこだまし、温暖化に歯止めがきかない。

米軍事費を5割増す

重ねて同日、大統領は議会に対して、27年度防衛予算を5割超増額して約235兆円とするよう要求した。世界第2の軍事大国である中国の防衛費は約40兆円であり、比較にならない。傍若無人な所業の継続が圧倒的な軍事力によって担保されようとしている。 昨年は関税交渉と併行して、米国内外から約1500兆円の投資約束を取りつけたと自画自賛していた。これに上積みして、15日には、台湾に対して、相互関税15%への引き下げと引き換えに信用保証を含む合計約80兆円超の対米投資を約束させた。ラトニック商務長官は、これで台湾の半導体製造生産力の40%が米国へ移り、米国の半導体自給体制が完成すると豪語した。台湾の産業は空洞化する。とすれば、「略奪」としか言いようがない。
侵略、拉致、「略奪」と相次ぐ暴挙で、「ならず者国家」というレッテルが米国にぴたりと貼りつく。
米国内でこれに対抗する動きは、昨年11月のニューヨーク市とシアトル市での市長選での、「社会主義者」を名乗る候補者の勝利である。いずれも大資本、富裕層に真っ向対峙(たいじ)して勝利を収めた。このような動向が、移民摘発などさまざまな圧力に対する抵抗と合流して広がりを見せていくのか、今秋の中間選挙に注目していきたい。