(社会新報2021年4月7日号3面《主張》より)
3月11日は東日本大震災から10年という節目にあたった。岩手・宮城・福島の3県で死者・行方不明者が1万8,000人余りに及び、今なお4万人余りが避難生活を余儀なくされている。
避難者の約87%は福島県民で、そのほとんどが原発事故による避難であることは容易に想像できる。こうした状況の下で、原発に関連する注目すべき動きがあった。
一つは東電の不祥事が相次いで発覚したことだ。①柏崎刈羽原発で昨年9月、所員が同僚のIDカードを持ち出して中央制御室に不正に入室していたことが1月に発覚、②柏崎刈羽原発7号機の安全対策工事の完了を東電は発表したが、未完了や不備などが発覚し、1月に撤回、③柏崎刈羽原発でテロ対策の不備が発覚し規制委が是正命令、④2月の最大震度6強の地震の際に福島第1原発事故で故障した地震計の放置が発覚など。さすがに梶山弘志経済産業相も「このままでは再稼働できない」と明言せざるを得なかった。
いま一つは首都圏に最も近い原発である東海第2原発の運転差し止めを求めた訴訟の判決で、水戸地裁は3月18日、日本原子力発電に対し、運転差し止めを命じた。
判決の骨子は「半径30km圏内の住民94万人について、実現可能な避難計画が整っておらず、住民の安全性に欠け、人格権侵害の具体的危険がある」という極めて明快なものだ。
3月27日には東京で「さようなら原発 首都圏集会」が開かれた。感染対策に配慮したため日比谷野外音楽堂への入場は1,300人に制限され、200人は会場外で待機したが、今こそ危険な原発を止めようとの熱気に満ちた集会となった。東海第2原発運転差し止め訴訟原告団共同代表の大石光伸さんは水戸地裁判決に関し、「あとは住民で頑張れというメッセージだと受け止めた。再稼働に同意しない運動を強めていきたい」と決意を述べた。
その立場から社民党は先月21日、福島みずほ党首(参院議員)を団長とする柏崎刈羽原発調査団を派遣し、所長と面談。不祥事の責任を厳しく追及した。
東電福島第1原発事故から10年。原発をめぐるこの間の推移は、あらためて「原発ゼロ」を目指す政治勢力が必要であることを教えている。社民党は“元祖脱原発の党”としてこれからも脱原発社会を願う市民とともに闘っていく。