2022年5月24日
社会民主党幹事長 服部 良一
- 初のアジア外遊として日本を訪問したバイデン米大統領は、5月23日、元赤坂の迎賓館で岸田文雄首相と会談した。両首脳は、ロシアのウクライナ侵攻に対して国際社会と共に毅然と対応すること、力による一方的な現状変更の試みを「いかなる場所でも」許容しないことを確認し、中国を強く牽制する姿勢で一致した。
- 岸田首相は「防衛費の相当な増額」や「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有検討など、防衛力の抜本的強化の方針を伝え、バイデン氏の支持を得た。また、バイデン大統領は「日本の防衛への全面的な関与」を約束し、「『核の傘』を含む拡大抑止の確実な提供」を保証し、日米同盟強化の決意を示した。日本の外交・安全保障政策の大転換につながる内容を、国内での議論もないまま外国首脳と合意することは全く理解できない。
- 岸田首相は米国主導の新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」への参加を表明した。IPEFはトランプ前政権下で環太平洋連携協定(TPP)から離脱した米国のアジア関与策としてバイデン政権が新たに提唱したものだが、経済面で中国に対抗する狙いは明確だ。
- さらにバイデン大統領は会談後の共同記者会見で、中国が台湾に侵攻した場合の軍事的関与を明言し、有事への対応を明確にしない従来の「あいまい戦略」を転換した。すでに、中国は「強烈な不満と断固とした反対を表明」して強く反発している。日本の防衛力増強や米国の拡大抑止の強化は、周辺国の軍備拡大競争を招き、逆に緊張を高めるおそれがある。
- 岸田総理に期待された、在日米軍からのコロナ感染拡大の背景にある日米地位協定の改定の提起や、核兵器禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加の表明などはなかった。ロシアのウクライナ侵攻や、中国の動きへの懸念も否定はしないが、「力対力」の対決姿勢ばかり先行させることは疑問である。気候変動、感染症といった地球規模の課題での協力や外交を通じた相互の信頼醸成こそを優先させるべきではないか。
以上