社会新報

【被爆被爆77周年原水禁世界大会】核も戦争もない世界を求める~日本は核兵器禁止条約の批准を

(社会新報8月24日号より)

↑原水禁広島大会開会総会。右上が金子共同実行委員長、左上が被爆者の切明さん(8月4日)。

↑原水禁長崎大会開会総会。右上が川野共同実行委員長、左上が池田章子社民党長崎総支部長(8月7日)。

 

 

3年ぶりの対面開催

 被爆77周原水禁世界大会が8月4日から3日間は広島市で、7日から3日間は長崎市で開かれた。新型コロナウイルスの感染のため、20年は完全オンライン、21年はオンライン併用での開催だったが、今年は対面での開催が実現した。

広島大会開会総会

 4日の広島大会の開会総会には全国から1200人が参加した。主催者を代表して金子哲夫大会共同実行委員長(原水禁共同議長)があいさつ。金子さんはウクライナ戦争について、「対話による解決を強く求める」と訴えた。その上で、「核使用の現実的な危機に直面していることは許せない。6月の核兵器禁止条約締約国会議では核抑止論の誤りが指摘された。一方でNPT再検討会議に出席した岸田文雄首相は核兵器の削減を求めなかった。核禁条約の批准を求める」と強調した。

 さらに被爆者が相次いで他界していることにふれ、「昨年10月に亡くなった坪井直さん(元日本被団協代表委員)の『ネバー・ギブアップ』の精神で運動を強化していこう」と呼びかけた。

 福島の現状報告に続いて今年93歳となる被爆者の切明千枝子さんが自らの被爆体験を証言した。切明さんは爆心地から1・7㌔で被爆したものの九死に一生を得た。「数分の差で助かった。自分が生き残ったことが後ろめたかった。幼い少女たちが死んでいった。その子どもたちの思いをもってほしい」と述べた上で、「二度と戦争のないように力を合わせて平和を守ろう」と訴えた。

 開会総会は高校生平和大使の取り組みや米国・ピースアクション共同代表のカロ・アクニャ・オルベラさんら海外ゲストのスピーチなどを受けて閉幕した。

 広島大会は5日の15の分科会やひろば・フィールドワーク、6日のまとめ集会と続いた。

 なお社民党の福島みずほ党首(参院議員)は6日の広島市主催の平和祈念式、広島県被団協主催の原爆死没者追悼慰霊式、9日の長崎市主催の平和祈念式典などに参加した。

長崎大会開会総会

 原水爆禁止世界大会・長崎大会開会総会が8月7日長崎ブリックホールで開かれ、国内外から約800人が参加した。

 開会式に先立ち、高校生1万人署名活動を行なう高校生や高校生平和大使らが作成した動画『高校生平和アクション2022年 青い空は』が上映された。 

 大会共同・代表の川野浩一実行委員長は主催者あいさつで次のように述べた。◇ ◇ ◇

 核保有5大国の首脳名で、核保有国間の戦争の回避と戦力的リスクの低減を「最重要の責務」とする共同声明が1月3日に発表されました。この起草者はロシアのプーチン大統領と言われています。核軍縮への具体的な定義もなく、何のための声明か、実効性は初めから疑問視されていました。そのような中、2月24日、ロシアはウクライナに侵攻しました。他国への武力侵略は絶対に許されません。あろうことか原子力施設までも攻撃し、さらに化学兵器、核兵器の使用さえも示唆しています。

 一方、わが国ではこの期に乗じて、保守系政党から核シェアリング、敵基地攻撃能力の保持、防衛予算の大幅増、さらには憲法改悪論まで声高に論じられるようになりました。広島・長崎では、核兵器による悲惨を体験しましたが、私たちは沖縄を、そして、多くの戦争体験を決して忘れてはなりません。今年は核廃絶に向け、オーストリアのウィーンで初の核兵器禁止条約締約国会議が開催されました。米国の核の傘の下にあるドイツなど4ヵ国をはじめ、80以上の国や地域から多くの人々が参加しました。しかし戦争被爆国の日本政府はオブザーバー出席すら拒否しています。

 今月、8月1日から開かれたNPT再検討会議に日本の首相として初めて出席した岸田首相はロシアによる核の威嚇を批判し、「ナガサキを最後の被爆地に」と呼びかけましたが、肝心かなめの『核兵器禁止条約』には触れず、被爆者をはじめ参加から反発の声が上がりました。私には米国に媚び、詭弁(きべん)を言っているとしか思えません。

 被爆地広島出身と名乗るなら、当然、核兵器禁止条約に賛同すべきだし、広島の黒い雨訴訟の原告の皆さんを被爆者として認めるなら、当然、長崎で「黒い雨」で被ばくした「被爆体験者」も被爆者と認めるべきです。まだまだ被爆者の戦後は終わっていません。平和な社会、世界が実現するまで、核兵器廃絶に向けて皆で頑張りましょう。

◇ ◇ ◇

 その後、米国のカロ・アクニャ・オルべラさんから平和活動の報告があり、マーシャル諸島からはビデオメッセージが届いた。

 長崎の被爆体験者訴訟について、被爆体験者訴訟二次原告の山内武団長と社民党長崎総支部長の池田章子市議会議員が「『被爆体験者』という不可解な用語で差別した」国・長崎県・長崎市を批判する報告。全国から集まった高校生1万人署名活動実行委員会や今年の高校生平和大使ら約110人も登壇し、1年間の活動を報告した。最後に、大会事務局長の谷雅志さんから大会基調提起があり、「原爆を許すまじ」を聞いて閉会した。

↑広島での折り鶴行進の参加者たち。