社会新報

【主張】オミクロン株と「米軍由来」ー今こそ日米地位協定の改定をー

(社会新報2022年1月19日号3面【主張】より)

新型コロナウイルスの感染が年明けとともに一気に拡大している。「第6波」が到来したとの認識が広がっている。
 今回の特徴は大きく二つ挙げられるのではないか。一つは「オミクロン株」と呼ばれる変異株で、不明な点もあるが、重症化率はこれまでに比べて低いものの、感染力が極めて高いことだ。1月1日に534人だった感染者は、1月12日には一気に1万3000人余りへと激増した。
 いま一つは「米軍由来」であることだ。1月10日から2週間、政府は沖縄・山口・広島の3県に「まん延防止等重点措置」を適用することを決めたが、いずれも米軍基地周辺で感染拡大が目立っている。
 2年にわたるコロナ禍は日本社会の深刻な現状を浮き彫りにした。その反省に基づいた対応が政府や自治体には求められる。
 とりわけ政府は、アベノマスクに代表される愚策とワクチン接種遅れに見られる後手後手といわれる対応が目立った。助かる命が失われる事態が相次いだだけに、責任は大きい。オミクロン株の特徴を考えれば、検査体制の拡充や先手先手の対応が重要だ。
 そして政府は「水際対策の徹底」を挙げていたが、米軍基地が水際対策の穴となっていたことが分かった。米軍は出入国の際にPCR検査を実施していないことが明らかになったからだ。今月9日になって米軍関係者に必要不可欠な活動を除き2週間の外出を制限することが決まった。しかし、「必要不可欠」かどうかを判断するのは米軍で、実効性は極めて疑わしい。
 こんなことがまかりとおるのは米軍に特権的な地位を定めた日米地位協定に「合衆国軍隊の構成員および軍属並びにそれらの家族は外国人の登録及び管理に関する日本国の法令の適用から除外される」(9条第2項)との規定があるためだ。
 玉城デニー沖縄県知事は今回の事態を受けて地位協定の見直しを強く求めているが、岸田文雄首相は「地位協定そのものに踏み込むことは考えていない」(今月9日のNHK「日曜討論」での発言)と素っ気ない。
 昨年12月16日の衆院憲法審査会でわが党の新垣邦男議員(沖縄2区)は、「憲法改悪に意欲を示す前に、まず日米地位協定を変えるべきだ」と訴えた。社民党は国民の命より米軍の機嫌をおもんばかる岸田政権を17日に召集された通常国会で徹底追及する。

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