社会新報

【主張】2プラス2合意の暴挙~国会審議なしに米国に大軍拡を約束

(社会新報1月25日号3面より)

 

 「身の丈を超えている」
 元自衛艦隊司令官の香田洋二さんが『朝日デジタル版』(昨年12月17日付)で、2023年度から5年間の防衛費を43兆円とし現行計画の1・5倍以上に増額すること、さらに27年度にはGDP(国内総生産)比2%へ防衛費を倍増することを明らかにした安保3文書改定に警鐘を鳴らしている。
 専守防衛の原則を葬り去る大軍拡の安保3文書改定を国会審議なしに昨年12月16日の閣議で決定し、米国に説明に赴き合意してしまった。とんでもない国会無視の暴挙だ。
 日米の外務・防衛閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)が今月12日、米国で開かれ、日本の敵基地攻撃能力(反撃能力)の「効果的な運用に向けて日米間の協力を深化させる」ことで合意した。
 2プラス2後に発表された共同文書では、日本が防衛費増額で防衛力を抜本的に強化する決意を示し、これに米側は「強い支持」を表明した。
 さらに共同文書では「宇宙での攻撃は同盟への明確な挑戦」と明言し、安保条約5条による米国の対日防衛義務の適用対象を宇宙に拡大することを確認。極超音速技術の共同研究の開始で一致した。
 中国への認識を「国際社会全体の戦略的挑戦」と敵視する。南西諸島防衛では沖縄の米海兵隊を離島防衛のための海兵沿岸連隊MLRに改編する。 
 従来の憲法9条に基づく専守防衛の原則では、自衛隊は防衛力の「盾」に徹し、米軍が打撃力の「矛」を担うという役割分担があった。しかし、敵基地攻撃能力の保有により、日本が「矛」の一部を担うことになる。
 共同文書は軍事面ばかりを強調する。2プラス2は日米の外務・防衛閣僚が加わる枠組みであり、外交の対話を重視すべきところだが、外交の側面をおろそかにする。中国などとは価値観が異なるからこそ、まず外交上の対話が大切なのだ。
 中国脅威論をことさらにあおり、米中対立の先にある米中軍事紛争に、日本が存立危機事態を発令し集団的自衛権を行使して参戦するような事態は何があっても避けなければならない。
 共同文書には地域の緊張を緩和するための戦略が全く見当たらない。軍事対軍事の思考だ。外交により困難を乗り越える英知を結集することこそが地域の緊張緩和をもたらす。
 通常国会が23日から始まる。安保3文書改定は専守防衛からの大転換にもかかわらず、国会審議は皆無だった。社民党はこの暴挙を国会で徹底追及する。

 

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