社会新報

「赤木ファイル」全518㌻を読む~佐川氏が改ざんを直接指示

(社会新報2021年7月14日号1面より)

 

学校法人「森友学園」への国有地売却をめぐる財務省の決裁文書改ざん問題で、同省は6月22日、自殺した近畿財務局職員、赤木俊夫さん(当時54歳)が改ざんの経緯をまとめた「赤木ファイル」を遺族の妻・雅子さん側に公開した。同省は24日、国会にもファイルを提出した。「赤木ファイル」には、改ざんを指示した財務省と、赤木さんら近畿財務局職員が2017年2月から4月にかけて交わした多数のメールが含まれ、書き換えに至る詳細なやりとりが明らかになった。佐川宣寿財務省理財局長が改ざんを直接指示したとするメールも含まれていた。

「赤木ファイル」は全体で518㌻にわたる。

印象的なのは、冒頭1㌻の怒りに満ちた備忘記録だ。「本省の対応」と題する備忘記録には次の一文がある。

「現場の問題認識として既に決裁済の調書を修正することは問題あり行うべきではないと、本省審理室担当補佐に強く抗議した」

決裁文書改ざんに抗議

下線を付けて強調し、「強く抗議した」と改ざんへの激しい憤りを表している。さらに「本省理財局が全責任を追う」と言うが到底「納得できず」と抵抗の意思を表明している。国家公務員としての矜持(きょうじ)が感じられる。

この冒頭の備忘記録が518㌻全体を総括しているように見える。「赤木ファイル」は、あってはならない国の決裁文書の改ざんという組織的犯罪を告発する怒りの記録だ。

最初のメールは、17年2月16日午後11時16分、赤木さんに転送された財務省理財局国有財産企画課長補佐のもの。翌日の衆院予算委で、民進党の福島伸享衆院議員(当時)が森友問題を追及するため同省に決裁文書の有無の確認を事前通告していた。この時点では通常の質問返しの対応で、課長補佐は文末に「ことが終わったらおごります」と余裕を覗かせている。

安倍答弁で状況は一変

しかし、翌17日、安倍首相が国会で「私や妻が(森友問題に)関係していたということになれば、それはもう間違いなく総理大臣も国会議員も辞める」と発言すると、状況は一変した。財務省は決裁文書の改ざんへ急速にかじを切る。

同年2月26日午後3時48分に、同省理財局係長から赤木さんら近畿財務局職員7人に送られたメール。「当該個所をマーキングしておきましたので、(略)近畿局の決裁文書につづられている調書等を修正・差し替えする」「※修正をお願いしたいのは、『調書』および『経緯』の部分」「できるだけ早急に対応願います」等と明記し、早急の改ざんを指示した。これによって「経緯」では安倍昭恵氏や鴻池祥肇議員秘書、平沼赳夫議員秘書、北川イッセイ副大臣秘書官らの名前が登場する部分が大幅に削除された。

続いて、同年2月27日午後6時15分、赤木さんが同省理財局の2人に送った「【確認依頼】M事案」と題するメール。

「指示に従い、内容を確認して、大幅にカットさせていただきました」

決裁文書である「事案の経緯」を大幅に削った。組織的な犯罪に手を染めてしまった無念さからか、言葉を押し殺して、あえて短くしたようにも思える。

組織と個の葛藤に悩む

ところが、同年3月8日17時45分、赤木さんが田村嘉啓本省理財局国有財産審理室長らに送ったメールでは、「売払調書」に関し、「会計検査院の受検を受ける当局として、既に意思決定した調書を修正することに疑問が残る」と記し、改ざんに異議を唱え始めた。本省からの指示とはいえ、あってはならない決裁文書の改ざんに対する抵抗だ。「疑問が残る」との抑制した行間から、組織と個の葛藤に苦しむ赤木さんの心情を読み取れないだろうか。

同年3月20日22時49分、同省国有財産審理室から赤木さんら近財職員に送られたメール。

「局長からの指示により、調書につきまして、現在までの国会答弁を踏まえた上で、作成するよう直接指示がありました」

佐川理財局長が決裁文書である「売払調書」の改ざんを直接指示したと明記している。

一方、同省が18年6月に発表した調査報告書は、佐川局長の改ざんへの関与について「方向性を決定づけた」と曖昧な表現に終始した。この点で「赤木ファイル」と大きく矛盾する。

佐川局長の直接指示の具体的な内容は何か。その背後で「安倍―菅」の官邸政治家がどう関与したのかも含めて、事件の全容解明が求められる。

 

森友学園問題

小学校新設を計画していた学校法人「森友学園」が、大阪府豊中市の国有地を8億円余りの値引きの格安で購入したことが、2017年2月に発覚した。安倍前首相の妻・昭恵氏が同学園の広告塔の役割を担い、その影響力などで土地の価格が不当に安くなったのではないかとの疑惑がもたれた。同省は、昭恵氏や複数の政治家に関する記述を削除するなど、決裁文書を組織的に改ざんした。近畿財務局の元職員赤木俊夫さんは18年3月、佐川理財局長らの指示で改ざんを強制されたとして自殺した。

 

 

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