社会新報

【主張】汚染水海洋放出の強行~政府と東電の無責任な暴挙を許さない

 (社会新報9月6日号3面より)

 

 国と東京電力は8月24日、東電福島第1原発から発生したALPS(多核種除去装置)処理汚染水の海洋放出を強行した。漁業関係者や被災者、世界の人々の反対の声を無視し、核汚染水を海に捨てるという最悪の暴挙だ。今後30年以上、垂れ流し続けるという。
 岸田首相は「漁業が継続できるよう、政府が全責任を持って対応する」と強調するが、8年前に福島漁協と交わした「関係者の理解なしには、いかなる処分も行なわない」との約束を破っておいて、誰が信じるというのか。首相は放出を「廃炉のために必要」と説明したが、廃炉への道筋は全く見えない。800㌧も溶融核燃料(デブリ)があるとされるが、12年経った現時点で、ロボットを使って取り出したのは、わずか数グラムに過ぎない。気の遠くなるような話だ。
 放射性物質は内に閉じ込めて管理するのが原発の大原則だ。その大原則をかなぐり捨て、海に投棄するやり方は、ロンドン条約に違反し、水俣病などの公害と等しく、重大な罪である。
 しかも、政府と東電は、海洋放出の代替案として、大型タンク長期保管案やモルタル固化保管案等をまともに検討すらしていない。全くの不作為だ。
 デブリに直に触れた冷却水と地下水などの混合汚染水がALPSで処理され、敷地内のタンクに貯蔵されている。東電の公開情報(8月17日時点)によると、全タンクの貯蔵水は約134万立方㍍、タンクの基数は1046基。東電はこのうちトリチウム以外の核種を国の安全基準以下まで浄化した貯蔵水を「処理水」と呼ぶが、全タンクの3割にすぎない。一方、トリチウム以外のストロンチウムなどの核種が基準値を超える貯蔵水を「処理途上水」と呼び、全タンクの7割を占める。まさに猛毒な汚染水だ。東電は二次、三次処理で基準内に浄化すると言うが、取り除けるかどうかは未知数だ。
 政府は、トリチウムについて「環境や人体への影響は考えられない」と強調するが、生物濃縮や遺伝子損傷の危険性を指摘する研究者も多い。
 社民党の福島みずほ党首は8月27日、福島県いわき市の小名浜港近くでの全国集会で、9月8日に福島地裁で提訴される海洋放出差し止め訴訟について、「裁判を全力で応援する。海洋放出の暴挙を一日も早く止めるために全力を尽くす」と決意を表明した。
 社民党は海洋放出を中止させるため全力で闘う。