社会新報

8・15 敗戦77年の千鳥ヶ淵戦没者墓苑で福島党首が不戦の誓い

↑福島みずほ党首が千鳥ヶ淵戦没者墓苑の六角堂前で「誓いの言葉」を述べた。

↑千鳥ヶ淵戦没者墓苑でフォーラム平和・人権・環境の主催する集会が開かれ、多くの人たちが参列した。

 

(社会新報8月31日号1面より)

 

 敗戦から77周年を迎えた8月15日、猛暑の中、フォーラム平和・人権・環境の主催による「戦争犠牲者追悼 平和を誓う8・15集会」が東京・千代田区の国立千鳥ヶ淵戦没者墓苑で開かれた。無名戦没者の遺骨を納めた六角堂の前で、社民党の福島みずほ党首が「誓いの言葉」を述べた。
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 福島党首は「誓いの言葉」の中で、「たくさんの方々の犠牲の上に獲得したのが日本国憲法であり、とりわけ憲法9条。今、私たちは憲法9条を持ち、平和国家としてこの社会をつくっていくのか、それとも軍事大国になり、戦争のできる国としてこの社会をつくり変えていくのか、まさに岐路にある」と指摘し、平和憲法の改悪を全力で阻止する決意を語った。
 党首はロシアによるウクライナへの侵略戦争について、「この戦争は、核兵器と原発はまさに危険であり、核兵器と原発の廃絶こそ必要であることを私たちに教えている」と強調した。
 また、党首は閣議決定された安倍元首相の国葬について「根拠の法律がなく、憲法が保障する法の下の平等や思想・良心の自由に反する。社民党は国葬に強く反対する」と強調した上で、「自民党と統一教会の癒着などが次々と明らかになった。統一教会の不当な圧力で政治がゆがめられたのではないか。徹底的に究明しなければならない」と訴えた。集会の冒頭、主催者を代表して、フォーラム平和・人権・環境の勝島一博共同代表が「歴史の忘却にあらがい、憲法理念の実現に向けて立ち止まることなく平和の歩みを進める」と語った。立憲民主党の近藤昭一衆院議員が同党代表の談話を代読し、阿部知子・立憲フォーラム副代表、戦争をさせない1000人委員会事務局長の内田雅敏弁護士が誓いの言葉を述べた。

靖国神社では

 15日、東京・九段北の靖国神社は、朝から猛暑に包まれた。
 日本敗戦から77年のこの日、多くの参拝者が訪れた。だが、新型コロナウイルス感染症のまん延が続き、以前ほどの人出はない。
 神社内で、特攻服に似た服装の壮年男子らが、「大東亜戦争は侵略戦争ではない」と記した幟(のぼり)を掲げ、「天皇陛下万歳」などと気勢を上げていた。聴衆は彼らを取り囲み、拍手喝采を送っていた。
 一昔前まで、日中戦争・アジア太平洋戦争の従軍経験者らが、8月15日に大挙して靖国神社を訪れた。だが近年、そうした戦争体験者は、ほとんど見かけない。

自己矛盾の閣僚参拝

 この日、高市早苗経済安全保障担当相と秋葉賢也復興相の2閣僚が、靖国神社に参拝した。
 高市氏は、記者団に対し、「国策に殉じられた方々の御霊(みたま)に尊崇の念をもって、感謝の誠を捧げてまいりました」と語った。
 超党派の「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」の集団参拝は、3年連続で中止となった。
 岸田文雄首相は、この日の参拝は見送ったが、代理人が「自民党総裁」として私費で玉串料を納めた。
 自民党の萩生田光一政調会長なども参拝した。萩生田氏については、旧統一教会との密接な関係が次々と明らかになっている。
 2日前の13日には、西村康稔経済産業相も靖国神社に参拝した。
 日本は戦後、サンフランシスコ講和条約で極東国際軍事裁判(東京裁判)の判決を受け入れた。だがその後、同裁判でA級戦犯とされた14人が、靖国神社に英霊として祀られた(合祀)。
 ゆえに、閣僚や国会議員による靖国参拝は、さらに玉串料や真榊(まさかき)の奉納などは、当人がどのように「思い」を語ろうと、「日本の戦争責任の否定」に直結する。
 こうした行為は、憲法20条3項の「政教分離原則」に抵触する可能性も高い。
 閣僚や国会議員らは、こうした事実に無自覚であってはならない。

岸田首相の陳腐な言動

 岸田首相はこの日、靖国神社にほど近い日本武道館で行なわれた全国戦没者追悼会に参列し、式辞を述べた。だがその中身は、前年の菅義偉首相の式辞や、2年前と3年前の安倍晋三首相(故人)の式辞と、ほとんど変わらなかった。
 「かつての戦争」での加害事実から目をそらし、「積極的平和主義」など陳腐な言葉を連ねるのみだ。まさに「安倍政治」の負の継承であり、「岸田カラー」は微塵も感じられない。
 ロシアによるウクライナ侵略が続く中、「侵略戦争反対」を説得力のある形で表明すべきではないか。
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 【靖国神社とは】1869年に明治天皇の発議により東京・九段北に創建された招魂社から、79年に改称された神社。

 戊辰戦争(68~69年)以降の国内戦争と対外戦争で、「国家のために命を捧げた人々の御霊(みたま)」246万6000余柱が祀られているという。昭和に入り、国家神道の役割を強めた。

靖国神社の神門。この先に拝殿が見える。

↑日中戦争・アジア太平洋戦争を「聖戦」と主張する人々(8月15日、靖国神社)。