社会新報

【主張】統一教会への「質問権」調査 ~ 文科相は早急に裁判所に解散請求をすべき

(社会新報10月26日号3面)

 

 岸田首相がやっと重い腰を上げた。

 17日、首相は文科相に対して、統一教会に関して宗教法人法が定める「質問権」に基づく調査を実施するよう指示した。「質問権」(同法78条の2)は、オウム真理教事件を受けた1995年の同法改正で導入された。「質問権」行使の前例はなく、初の適用となる。調査指示は一歩前進だが、あまりにも遅きに失した。

 同法81条には、裁判所への解散命令の請求に関する規定があり、一刻も早く請求手続きを進めるべきだ。

 首相は17日の衆院予算委で、統一教会との関わりが「政治への信頼を傷つけた」と陳謝。萩生田自民党政調会長も質疑で自らの関与について「猛省しなくてはならない」とやっと非を認めた。首相は調査を指示した理由について、組織的な不法行為責任を認めた民事事件の判決が多数あることや、9月末までの1ヵ月弱で1700件以上の相談が寄せられたことを挙げた。

 統一教会による「霊感商法」や強引な献金活動などの被害は、1980年代以降、問題視されながらも放置されてきた。政治の怠慢だ。全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の調べによると、1987年から2021年までに統一教会関連による被害件数は3万4537件、被害総額は1237億円を超えている。異常な収奪であり、信者の貧困化や家庭崩壊など深刻な事態が続いている。

 安倍元首相銃撃事件の容疑者は、統一教会信者の母親が1億円近い献金によって家族が崩壊したことへの怨恨から、統一教会の広告塔・安倍元首相への犯行に及んだと供述している。

 文化庁は25日にも質問権行使の基準や基本方針をまとめるための専門家会議を開く。その後、文科相の諮問機関「宗教法人審議会」の意見を聴取し、年内に調査を始め、解散命令に該当する事実関係を把握すれば、裁判所に解散命令を請求する可能性がある。

 しかし、実態を明らかにするには文科省や文化庁の権限は限られており、施設立ち入りには統一教会の同意が必要となる。実態把握には多くの被害者や全国弁連の協力が必要だ。

 憲法の保障する「信教の自由」は尊重されなければならないが、統一教会の場合、宗教に名を借りた悪質な資金集めである。首相は19日の参院予算委で、統一教会の解散命令の要件について「民法の不法行為も入り得る」との見解を示した。迅速で徹底的な調査をした上で、文科相は早急に裁判所に統一教会の解散請求をすべきだ。そして今国会で悪質献金被害救済法案を成立させたい。