
政府交渉を終えて会見する刻む会の井上共同代表や福島党首ら(左側)=9日、参院議員会館。

政府担当者(左側)に要請書を読み上げる刻む会の井上共同代表と社民、共産、立民、れいわの国会議員団。
戦時中に水没事故を起こした海底炭鉱「長生炭鉱」(山口県宇部市)の調査活動を行なってきた市民団体「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会(刻む会)」が8月25、26日、犠牲者のものと見られる人骨を収容したことを受け、超党派の国会議員らと共に、今月9日、参院議員会館で日本政府側と交渉した。
収容された遺骨の身元特定や遺族のもとへ帰還させる支援を行なうことについて交渉した。社民党からは福島みずほ党首、大椿ゆうこ副党首、ラサール石井参院議員が同席し、責任逃れをしようとする日本政府側を追及した。
長生炭鉱は1942年2月3日、水没事故を起こし、犠牲者183人を出した。うち136人が朝鮮人労働者で、沖縄出身の労働者らもいた。
警察と外務が連携へ
DNA鑑定に関して、刻む会は韓国側で遺族から提供されたDNA情報と遺骨のそれを照合し、身元を確認してほしいと求めたが、警察庁の担当者は「検出方法が日韓で異なると鑑定がうまくいかない」「鑑定の際は人骨を切断するなど、破壊する可能性があるため、その場合はあらためて鑑定することが困難になる」などの答えに終始し、外務省の担当者も「今後、意思疎通を重ねたい。現状は相手もあるので答えにくい」と、後ろ向きな姿勢。福島党首は「シベリア抑留の犠牲者のDNA鑑定も行なわれている」と指摘した。
刻む会や議員らの追及に対し、警察庁の担当者は「やらないとは言っていない」と述べ、外務省と連携しDNA鑑定を行なう方向で進めていくとした。
潜水調査で長生炭鉱の中に多くの遺骨が残されている可能性が高いことがあらためて分かった中で、多額のコストや大変な労力のかかる遺骨収容を日本政府がいかに支援するかについては、今年4月の参院決算委で社民党副党首の大椿ゆうこ参院議員(当時)が石破茂首相から「遺骨が安全な作業によって発見され、遺族のもとへ帰っていくことの重要性は、私自身よく認識している」との答弁を引き出した。
9日の政府交渉では、厚労省の担当者は「安全性に懸念があるため関与できない」との従来の消極的な主張を繰り返したものの、遺骨収容作業中に炭鉱が再び落盤しないか等の安全性について、刻む会の井上洋子共同代表が「こちらの側の専門家の知見も参考にしてほしい」と求めたのに対し、同省側も「知見を聞くことには異存はない」とした。
80人分のDNA情報
政府交渉後の会見で井上共同代表は、長生炭鉱事故の犠牲者のうち、「韓国政府が遺族から集めたDNA情報が76人分ある。日本でも4人分確保できる見込みで、犠牲者のうち約半数のDNA情報がそろう」と報告。今後も「各国の水中探検家たちの協力で遺骨調査・回収をしていく」と意欲を見せた。
この日の政府交渉について福島党首は「警察庁と外務省、韓国政府の連携が確認できたのでDNA鑑定が進むのではないか」と期待した。今後の調査支援では、「長生炭坑のピーヤ(排気・排水塔)内の鉄管や木材を取り除くことに予算を獲得することはできるのではないか」と述べた。
ラサール議員は、「警察庁とのやりとりで、どのようにしたらDNA鑑定ができるかという話を聞きたかったのに、そこには全然至らない。それは植民地の問題や戦後補償の問題に、できるだけ踏み込みたくないからだ。そうした政府の姿勢に風穴を開けるのが、長生炭鉱問題だ」と指摘した。
「石破首相は踏ん張れ」
会見を締めくくったのは大椿ゆうこ副党首。「今年4月7日の決算委員会での私の質問に石破首相は『関係者のご納得が得られるのであれば現地に赴くこともちゅうちょしない』と言った。せっかくいい発言をしてくれたので次につなげたい。次の首相になった時に停滞することがないよう、石破首相には最後に踏ん張りを見せていただきたい」と求めた。