社会新報

【主張】COP26の合意-「削減目標」を見直し大胆に強化しよう-

(社会新報2021年12月1日号3面《主張》より)

 

英国のグラスゴーで開かれた国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が「産業革命前からの世界の気温上昇を1・5度以内に抑えるための努力の追求を決意する」とした成果文書を採択して閉幕した。

2015年に採択された「パリ協定」が「1・5度」を努力目標にとどめたことと比べれば、197の国・地域が危機感を共有し、共通の目標を明確にできたことは一歩前進とは言える。

この目標を達成するには、2030年までに温室効果ガスの排出を10年比で45%削減し、50年までに実質ゼロにすることが必要だ。しかし各国が国連に登録している削減目標(NDC)が達成されたとしても30年の排出量は10年比13・7%増となり、今世紀末には平均気温が2・7度上昇する見通しだ。

温室効果ガス排出が多い石炭火力の扱いがCOP26の焦点となったが、結局「段階的削減を目指す」にとどまった。当初案の「段階的廃止」から後退したことは残念だが、脱石炭の流れは止まらないだろう。期間中、コスタリカとデンマーク政府の呼びかけで「脱石油・ガス国際同盟」が始動し、「脱化石燃料」の取り組みが問われた。日本は今年の4月にこれまでの「30年までに13年比26%削減」という目標を他の先進国並みの「46%削減」に引き上げて面目を保ったが、実質が伴っていない。COP26でも石炭火力廃止に消極的な態度に終始し、国際NGOから温暖化対策に後ろ向きな国に贈られる「化石賞」を贈呈されるなど、世界の潮流から周回遅れとなっている。日本政府が10月に決めたエネルギー基本計画も、30年の電源構成で石炭火力の割合を19%とし、原子力を20~22%とするなど、時代錯誤も甚だしい内容だ。

社民党は、温室効果ガスを30年に13年比60%減、50年にゼロを目標とし、同時に脱原発を決断することを求めている。温暖化対策は何より省エネと再生可能エネルギーの促進を両輪として進めるべきだ。

長年にわたって途上国の資源を収奪し、温暖化ガスを大量に排出して成長してきた先進国のあり方が気候変動の背景にあり、これが第一次産業の比重が大きくインフラが未整備な地域に集中的に影響を及ぼしつつある。気候変動の影響や負担、利益を公平・公正に共有し、弱者の権利を保護する「気候正義」の意識を持ち行動することが、特に先進国に強く求められている。

 

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