社会新報

具志堅さん、外国特派員協会で訴え~沖縄戦の米兵遺族にDNA鑑定への参加を呼びかけ

8月7日、日本外国特派員協会で会見した具志堅隆松さん。(FCCJ提供)

福島党首は、靖国神社前でハンストをする具志堅さんを激励に訪れて連帯のあいさつ。(8月15日、東京都千代田区九段北)

 

(社会新報9月5日号1面より)

 

 沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松さんが8月7日、都内の日本外国特派員協会(FCCJ)で記者会見を行なった。目的は、戦没者の遺骨が残る激戦地の土砂が辺野古新基地建設に使用される問題を海外、特に米国に暮らす沖縄戦の戦没者遺族に伝えることだ。
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 会見の冒頭、具志堅さんは「ガマフヤー」として戦没者の遺骨収容とDNA鑑定に携わるようになった経緯を話した。
 40年間、遺骨収容に献身してきた具志堅さんは、遺骨を何とか遺族に返還したいといつも考えていた。米国がDNA鑑定に取り組んでいることを知り、日本でも取り入れてほしいと厚労省に繰り返し要望するようになった。

DNA鑑定対象を拡大

 日本政府は元来、戦没者遺骨収容に消極的で、国の支援といえば、戦友会や遺族会が海外に遺骨収容に出かける際の旅費を補助する程度だった。具志堅さんが理由を問うと、「遺骨収容を公的に行なう根拠法がないから」との答えが返ってきた。ならば根拠法を作ろうということで具志堅さんが声を上げ、超党派の議員立法によって2016年に成立したのが、戦没者遺骨収集推進法だ。さらに21年には、遺留品等の手がかりがない遺骨に対するDNA鑑定の対象が、厚労省がDNA検体を保管する全地域(海外含む)に拡大された。
 しかし、日本政府はその取り組みと正反対の計画を打ち出した。それが、沖縄戦の激戦地とされた沖縄島南部から採取した土砂で辺野古新基地建設の埋め立てを行なう「遺骨土砂問題」だ。報道によれば、10年4月から23年12月まで県内の建設工事などで見つかった戦没者の遺骨は少なくとも1171柱に上り、そのうち南部の糸満市と八重瀬町から見つかったのは、それぞれ740柱と29柱だ。
 遺骨収集は国の責務と法律で定められているにもかかわらず、防衛省は遺骨収集の場所そのものを破壊する計画を立て、遺骨収集を所管する厚労省も防衛省の計画を止めようとしない。それは日本政府が引き起こす国際的な人道問題だと、具志堅さんは一貫して訴えてきた。沖縄で未収容のまま残されている遺骨は、沖縄人・日本人のものに限らない。戦没者遺骨のDNA鑑定を求めていた時からずっと、具志堅さんは日本人以外の遺族も対象にするよう求めており、すでに韓国の遺族は政府宛ての集団要望書を提出している。一方、沖縄戦で命を奪われた米兵の遺骨も少なくとも228人分が未回収だと報じられている。具志堅さんは「米国の遺族にもDNA鑑定に参加する権利があると伝えたい」と声を強めた。

大事な自然壊す愚かさ

 具志堅さんは、遺骨土砂問題は辺野古新基地建設への賛否を問わない人道上の問題と強調してきた。それに対し、記者から「沖縄島南部の代わりに奄美大島から土砂を採取する可能性が報じられたが、それは容認するのか」との質問が飛んだ。具志堅さんは「奄美は世界自然遺産の島で、辺野古は生物多様性が豊かな海だ。一つの自然を壊し、もう一つの大事な自然を壊すのはとても愚かなことだ」と断言し、「自分は基地に反対だ。沖縄は80年間、基地の負担にあえいできた。もう解放されて当然だ。これ以上、戦争に近づきたくない。戦争につながる全てのものを否定する」と語気を強めた

米軍と直接交渉したい

 またFCCJのダン・スローン理事会長は、「沖縄のことは誰が決めているのか。沖縄県か、日本政府か、米軍のような外部勢力か」と質問した。具志堅さんは「自分たちで決めたい」ときっぱりと答え、「私たちが米軍の事件・事故を改善したいと思っても、米軍・米政府と直接対話ができない。『復帰』前はできていたが、今は日本政府・沖縄防衛局が入ってきた。被害者である沖縄人が加害者である米軍と直接話し合うのが大切なことで、沖縄防衛局は間に入るべきではない。私たちは米軍と直接話す権利も能力もある」と断言した。
 8月20日から、防衛省は県との事前協議を尽くさないまま、大浦湾側での護岸造成のための軟弱地盤杭打ち工事を開始。埋め立て材の調達場所の選定も、ますます大問題になりそうだ。

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靖国神社前でハンスト

 敗戦79年を迎えた8月15日、靖国神社鳥居前で抗議のハンストに入った具志堅隆松さんは、沖縄戦犠牲者の遺骨が混じる土砂を米軍基地建設のために海に捨てるのは、「死者への冒とくであり、遺族と日本国民に対する裏切りだ」と糾弾した。福島みずほ党首が激励に駆けつけ、熱い連帯のあいさつを行なった。

 さらに、具志堅さんは、東京大空襲の指揮を執り一晩で10万人を焼夷(しょうい)弾によって殺りくした米空軍将官カーチス・ルメイに、日本政府が最高位の勲章を与えたことを「まったく理解できない」と切り捨て、この勲章を返納させるか無効にするよう内閣府賞勲局に要請すると訴えた。