(社会新報2021年4月28日号1面より)
政府・防衛省は、沖縄戦最後の激戦地で今も多くの遺骨が眠る南部の土砂を辺野古新基地建設の埋め立てに使うとしています。4月4日、福島みずほ党首がオンラインで、撤回を求めて頑張る沖縄平和市民連絡会の北上田毅さん、沖縄遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松さんに話を聞いた。
違法だらけ熊野鉱山
北上田毅さん 政府・防衛省は昨年4月、沖縄県に提出した辺野古新基地の設計概要変更申請の中で、埋め立て用の土砂の全量を沖縄県内で調達するとした。総量4,500万㎥の約7割、3,160万㎥が糸満市・八重瀬町など南部地区からだ。
焦点は、沖縄県戦跡国定公園の只中、「魂魄(こんぱく)の塔」や「有川中将以下将兵自決の壕」などに近接して着手された熊野鉱山の開発。政府は、埋め立ての土砂は法令で認められた鉱山から採取すると言うが、熊野鉱山は、自然公園法が定める知事への開発届抜きの着工はじめ、森林法、農地法、さらに糸満市の風景づくり条例や沖縄県の赤土等流出防止条例への違反も指摘される、違法のオンパレードだ。
県が自然公園法違反で作業停止を指示したため、工事は止まり、業者は開発届を県に出し直した。自然公園法の33条2項によると、国定公園の風景保護の必要があれば、知事は開発事業の中止を命じることができる。期限は、県の届出受理から30日以内で、4月16日がタイムリミット。玉城デニー知事が毅然(きぜん)とした結論を出すよう願っている。
私たちの要請は2つ。南部からの土砂搬出を止めるため、防衛局の設計概要変更申請を知事が不承認にすること。そして、自然公園法33条2項に基づく知事の措置命令によって、「歴史の風景」としての戦跡を破壊する熊野鉱山計画(メモ参照)を止めさせることだ。
遺骨入らぬ採取無理
具志堅隆松さん 「ガマフヤー」は沖縄の言葉で「ガマを掘る人」。沖縄戦戦没者の遺骨を掘り出し、国家事業となったDNA鑑定によって家族のもとへ帰す活動をしてきた。そこに降って湧いたのが今回の問題。これまでの成果が全部覆されて遺骨が散逸、収集する場所そのものも無くなってしまう危機に直面している。
熊野鉱山の場所は、昨年9月末から進めていた私たちの遺骨調査の現場だ。11月1日、行ってみたら一帯が伐採されている。居合わせた、地下の不発弾を調べる磁気探査の業者の人の話では砕石場になるという。驚いた。実際に遺骨が出ている場所だ。そこだけではなく、沖縄本島南部の緑地帯のほとんどの地域で、今も遺骨がみつかる。
菅首相や防衛省は、「採掘業者が遺骨に配慮した対応をする」と、まるで業者が遺骨収集をやるかのように説明するが、それは無理だ。遺骨収集には、長年の経験と人骨についての知識が要る。ましてや、南部の遺骨に多いのは砲撃でバラバラになった破砕骨で、見分けるのがとても難しい。その上、足や手の親指の付け根部分の種子骨、小指の先、特に足の小指の先、薄い肩甲骨などは風化し、土に入ってしまう。私たちでも、約210個ある1人分の遺骨すべてを探し切れたことはない。遺骨の混ざらない状態で南部の土を採取するのは不可能だ。
琉球石灰岩の特性を知らない人は、表面の土砂を埋め戻し用に取り置いて補完し、その下を掘れば遺骨の無い土砂が採れると言う。だが石灰岩地帯は雨水の浸食で地下に空洞(ガマ)ができる。その中で亡くなった方も多い。地下10mぐらいから掘り出したケースもある。空洞の場所を重機で掘ると地下の天井が崩れ落ち、遺骨があっても岩石と一緒に重機が持っていってしまう。表層でも地下でも、土砂には複数の方の遺骨が混ざり合うから、個体性が失われ、家族に帰すことが困難となる。
防衛省は「恥ずべき」
先の大戦で亡くなった将兵の遺族に届いた遺骨の箱に入っていたのは、ほとんどの場合、亡くなった場所の石、砂(霊石、霊砂)だった。遺骨が入った南部の土砂を使う埋め立ては、「霊石、霊砂」をゴミのように海に廃棄するのと同じだ。
防衛省は、戦没者に対して何かしら思い入れがあるはずだと考えていた。ところが、防衛省・自衛隊にとって戦友、先輩に当たる戦没者の遺骨を、旧敵軍の米軍基地をつくるための埋め立てで打ち捨てる。人の道に外れた恥ずべき行為だ。しかも、南部の土砂に遺骨が入っていることを知っての上でだ。
それで私は、もうこれしかないと、3月1日から6日までハンガーストライキを決行した。国が改めるまで、私たちは絶対に諦めない。
福島党首 沖縄では与野党、辺野古基地建設反対・賛成を問わず、南部からの土砂搬出に反対する声が圧倒的。沖縄戦では本土出身者、朝鮮半島の人たち、米兵も犠牲となった。みんなの問題として共有し、国会の内外、力を合わせて計画を撤回させましょう。
4月17日付の沖縄タイムス報道によれば、同計画について玉城デニー知事は16日、自然公園法に基づき、関係機関と遺骨の有無を確認した上で土砂採取を始めるよう措置命令を行なうと表明。採掘にあたっては遺骨が混じった土砂を採取しないよう留意することも求めた。採掘禁止には、「法制度上の限界」を理由に踏み込みを避けた。