社会新報

【謹賀新年 社会新報元旦号対談】福島みずほ党首とジャーナリストの鈴木エイトさん~統一教会と自民党への追及はまだまだ続く

鈴木エイトさん

鈴木エイトさんの著書を持つ福島みずほ党首。

 

 安倍元首相の銃撃死事件から約半年。旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と自民党の癒着問題が国政を大きく揺るがしてきた。献金に関する被害者救済法は不十分のまま成立したが、同法の改正が必要である他、宗教2世への虐待問題や脱会信者へのケアなど課題は山積。解決への道はまだ入口にすぎない。追及の手をまだまだ緩めるわけにはいかない。社会民主党の福島みずほ党首とジャーナリストの鈴木エイトさんが熱く対談した。

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 福島みずほ党首 あけましておめでとうございます。エイトさんのご著書『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』を読むと、私が知っている国会議員の名前が次から次に出てきて大変ショックを受けています。エイトさんは全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の弁護士と連携をとりながら本当に頑張ってこられました。心より敬意を表します。取材を始めた端緒を教えて下さい。

政治家の方がひどい

 鈴木エイトさん 新年おめでとうございます。最初は2002年から統一教会の偽装勧誘の被害を入り口で防ぐ活動をやっていました。一歩踏み込んで統一教会のビデオセンターを訪問して、統一教会の正体を知らされずに受講している人たちを救出する活動もやった。調べていくうちに、街頭で勧誘する側の信者も実は人権侵害の被害者であり、そういう信者を選挙運動員として使うだけ使ってポイ捨てにする地方議員の存在を知ったんです。政治家の方がさらにひどいじゃないかと気付いて政治家の追及を並行してやってきた。

 2013年の参院選で安倍晋三首相と菅義偉官房長官が直接、統一教会に票の取りまとめなどを依頼する裏取引をした証拠を入手して、これは国の根幹に関わる問題だということが分かり、そこから孤独な闘いが始まったのです。いろんな週刊誌、月刊誌などにこの裏取引の問題を持ち込んでもなかなか拾ってもらえなかった。7月8日の安倍氏殺害という大変不幸な事件が発生して、ようやく癒着の実態が世間に知られるようになったが、肝心の政治家への追及が中途半端な形で止まっている状態なので、このまま幕引きをさせてはならないと思います。

 福島 問題の側面が2つあって、自民党の政治家たちが統一教会の広告塔となって被害を拡大させてきた側面と、統一教会によって政策がゆがめられた側面があると思うんですね。

 鈴木 広告塔というよりも、信者への内部統制の手段として政治家を利用してきた。「こんなすごい国会議員がうちの教団のイベントで祝辞を述べた」と内部向けに宣伝する。

 教団と政治家の関係性が一般に知られたら、その政治家に迷惑がかかるから、外部向けには宣伝してこなかったんです。それがだんだん、タガが外れてきて、07年ぐらいから教団系の韓国のメディアに日本の政治家の発言の映像のURLが貼られるようになって、僕でも見られるようなった。教団のピースTVに細田博之衆院議長が19年、名古屋での韓鶴子総裁を迎えての行事に出席して発言する映像もアーカイブとして残されていた。教団側は有力政治家との関係を宣伝したいが、一方で政治家に迷惑をかけてはいけないという、せめぎ合いがあった。

 それを突破したのが、21年に安倍元首相が統一教会系「天宙平和連合」(UPF)の集会にビデオメッセージを寄せたこと。その衝撃は一番大きかったと思います。

 福島 もう一つの側面、政策がゆがめられきた問題も話していただけますか。

 鈴木 統一教会は、青少年保護育成条例、青少年健全育成基本法、家庭教育支援条例、家庭教育支援法の制定に向けて地方で策動したり、自民党改憲草案と似通った改憲の主張をし、ずっとスパイ防止法の制定を求めてきた。自民党の保守派の主張と共鳴していた。特に2000年代初頭から前半のジェンダーフリーに反対するバックラッシュ(揺り戻し)の時代に、男女共同参画を自民党右派と一緒につぶしてきた。ただ統一教会だけが共鳴してきたわけではなくて、日本会議や宗教右派なども連携した。

ジェンダー平等や多様な性への攻撃を許さない

 福島 私は12月10日の参院消費者問題特別委員会で岸田首相に被害者救済法案で質問しました。統一教会と自民党国会議員の政策協定書の中には憲法改正、家庭教育支援法、青少年健全育成基本法を進めることが盛り込まれている。選択的夫婦別姓やLGBT差別禁止法、同性婚法案に反対などの項目も協定にはある。統一教会はジェンダー平等や多様な性を攻撃してきた。これは政治に対する介入だと批判しました。

 さらに私は首相に対して統一教会の憲法改正の主張と自民党改憲草案が酷似している問題も追及しました。24条改正案に「家族は互いに助け合わなければならない」という文言が入っている。憲法ではなく道徳ですね。公助よりも自助を強調する。家父長制的な家族の規定ではないですか。統一教会の2世信者らで構成する「勝共ユナイト」の若者たちの憲法改正案のパンフレットにも憲法24条に家族条項を入れることになっている。

 ところが皮肉なことに、統一教会は、家族が大事と言いながら、実際には生活を、人生を、家族そのものを破壊してきた。元2世信者の人たちも言うように、親はネグレクト状態で教団に多額寄付をし、家族は壊れていく。

人生も家庭も崩壊させる「破壊的カルト」

 鈴木 教団が名称に「家庭」を入れているにもかかわらず、やってることは全く逆ですね。統一教会は一般的なカルトと言うよりも「破壊的カルト」で、人生も家庭も全てを破壊してしまう。

 教義にある強烈なコリアン民族主義と反日本の思想では日本の人には受け入れ難いため、「反共」という一致点を見出した。文鮮明教祖は韓国の朴正煕政権に取り入るために反共の思想をわざわざ持ち出し、その流れで国際勝共連合を韓国と日本で1968年に結成し、岸信介や児玉誉士夫、笹川良一といった保守政治家や大物右翼にどんどん食い込む。東西冷戦の終結でその勝共・反共という言葉が意味をなさなくなってきた時に、今度はLGBTQの人権やジェンダー平等の運動に対して、社会の風紀を乱すとして「文化共産主義」という言葉を使って攻撃を始めた。カメレオン的に姿を変えて立ち回ってきたのです。

 福島 『文藝春秋』10月号にエイトさんが書いていましたが、05年の教団内部文書に第二次男女共同参画基本計画で「ジェンダーという文言を使用させない」よう、安倍晋三官房長官と山谷えり子内閣府政務官のチェックを受けられるように統一教会が関係省庁、議員に積極的に働きかける、という記述がある。ジェンダー平等への攻撃で統一教会と自民党が連携。結局、ジェンダーという言葉は最終的には入るんですが、当時、ジェンダーという言葉が入るかどうかが大問題だったんですよね。

 ところで、ご著書には安倍首相が13年に直々に統一教会に組織票を依頼した内部文書を入手したとありますね。

 鈴木 この文面から見ると、組織として期日前投票するようにと明らかに読み取れます。岸信介の恩人である北村サヨ(天照皇大神宮教教祖)の孫にあたる北村経夫・産経新聞政治部長(当時)を参院議員にするため、安倍さんが13年に直々に教団に票のとりまとめを依頼したのです。

 政治家の方が統一教会を軽く見ていた側面もある。ちょっとコンビニ感覚で、声をかけると選挙も手伝ってくれるし、人も派遣してくれる。その見返りは祝電を送ればいいや程度で。福田達夫自民党総務会長が「何が問題なのか分からない」とコメントして大ひんしゅくを買ったが、これは率直な感想ではないのか。自民党議員はみんな統一教会と気軽に付き合ってきたじゃないか、とね。

 福島 エイトさんは本当にコツコツ取材をしてきた。その苦労や大変さを少し語っていただけますか。

 鈴木 統一教会の取材を苦労とか大変とか思ったことは一度もないんです。ストイックな感じはない。楽しみながら、教団の妨害をかいくぐり撮っています。都内のホテル、勝共連合50周年記念集会をやった時も、僕は会場近くで張り込み、政治家が来たらスマホで撮った。すると顔なじみとなった教団の職員が寄ってきて「エイトさん、最近どうなんですか」と聞いて取材を妨害する。

 福島 なるほど(笑)。

 鈴木 以前は統一教会関連の企画をいくら出版社に持ち込んでも全部アウトで、『AERA』で1回書いたんですが、第2弾も出せなかった。それでも、誰かがこれを記録しなきゃいけないとの使命感だけはあったんです。

 7月8日に安倍氏殺害事件が起こって、明らかにその中で自分も巻き込まれると覚悟を決め、それから半年が経った。報われたという感覚はない。否応なしに渦中に入ってしまった。だからなんか変な感覚ですよね。自分は変わってないんですけど、周りが変わったという感じです。

 事件直後の1〜2週間は、何人かの識者がテレビでコメントしていたが、直近10年間の統一教会と自民党の関係を詳細に語れる人が誰もいなかったんです。そこで私は「#鈴木エイトを出せ」とSNSで発信してあえて売り込んだ。

 福島 先日、参院の質疑で、岸田首相に対して解散命令請求をすぐ出すべきだと求めた。これに対して岸田首相は「スピーディーに」と明言した。だから請求はやるんじゃないかと思っています。

2世信者虐待防止や脱会者へのケアなど課題は山積

 鈴木 当然、岸田首相は解散命令請求でやるつもりだと思う。文化庁宗務課の課長とも少し話しましたが、文化庁側もちゃんと証拠を集めて、ひっくり返されないように証拠を出したいと話していました。

 質問権をもう1回行使して回答期限が年明けになるので、どれだけ早く見ても、解散命令請求が出るのは1〜2ヵ月後で、その後、一審の判断が出るまでに最低半年以上かかります。最終の解散命令まで数年かかる。オウム真理教の時は7ヵ月で解散命令の判断が出た。明覚寺の場合、解散命令まで3年かかっています。

 また、山上徹也容疑者の鑑定留置が1月10日に終わると、容疑者の発言が出てくる可能性がある。

 12月10日に成立した被害者救済法は、献金の規制がメーンで、本来はもっとカルト予防法であるとか、人権侵害やマインドコントロールをどう防ぐのかとか、海外に出ていったお金をどう取り戻していけるのか、海外で虐げられている日本人信者の救済であるとか、脱会した2世信者へのケアなど、長いスパンで考えていかなければならない。

 今回一番懸念しているのは、被害者救済法ができたから、もうこの問題も一件落着みたいな空気感。まだ入り口にすぎません。