社会新報

危険な「緊急事態条項」~飯島滋明教授が憲法連続講座で指摘~

(社会新報2022年3月9日号3面より)

 

 社民党は2月24日、衆院第2議員会館で憲法連続講座の第1回を開催。名古屋学院大学教授(憲法学)の飯島滋明さんが「岸田政権でどう動く? コロナ禍と緊急事態条項」とのタイトルで講演した。オンラインも含めて200人が参加した。

 飯島さんは、岸田文雄首相が昨年11月1日に「党是である憲法改正に向け、精力的に取り組んでいく。与野党の枠を超え、憲法改正の発議に必要な国会での3分の2以上の賛成を得られるよう議論を深める」と発言し、同月20日には「憲法改正推進本部」を「憲法改正実現本部」に改称したことを取り上げ、改憲に前のめりの姿勢を批判した。

 また、自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党などの改憲論について、「憲法改正自体を目的にして、改憲の口実となる項目を必死に探している。その結果、非現実的な想定を改憲の必要性と必死にこじつけている」と指摘。自民党が2018年にまとめた改憲4項目の一つである「緊急事態条項」についても、「立憲主義を棚上げすることを認めるものだ」と批判。立憲主義とは個人の自由と権利を保障する憲法を権力者に守らせる考え方であり、緊急事態条項の考え方とは対極にあるとした。

コロナ「便乗」を批判

 飯島さんは緊急事態条項について、さらに批判を展開。「新型インフルエンザ等特別措置法に基づいて発出される緊急事態宣言とは全く別もの」と述べ、コロナ禍の「便乗」改憲論に警鐘を鳴らした。緊急事態条項では、コロナ感染拡大を名目に、①警察官による市民の身体拘束の可能性②土地や家屋などを政府が強制的に収用しても損失補償をしなくても良いとされる可能性③政府批判の言説を禁じる政令も憲法違反とされない可能性 があるとして、懸念を表明した。

 昨年5月3日に自民党の下村博文衆院議員が改憲派の集会で、緊急事態条項の導入を訴えつつ、「今回のコロナを、ピンチをチャンスとしてとらえるべきだ」と発言したことを問題視。

 「多くの市民が苦しんでいる『コロナ感染』は、改憲派の政治家には『チャンス』でしかない。緊急事態条項導入の口実でしかない」と批判した。

 その上で飯島教授は、市民にいま必要なのは、憲法改正ではなく、生存権(25条)や幸福追求権(13条)を実現する政治であると強調した。

 

↑憲法連続講座で講演する飯島滋明教授(2月24日、衆院第2議員会館)。

 

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